サッカー王国イタリア、なかでも超名門クラブでプレーするつらさは、想像を絶する。チーム内での熾烈なポジション争い。ミスをしようものなら、サポーターやメディアから容赦のない批判が――。そんな逆境を楽しむかのように、遮二無二前進を試みる一人のサムライ、長友佑都。彼のポジティブな独自の哲学に、我々が学ぶことは多い。『アエラスタイルマガジン 34号』(朝日新聞出版)で語ったセリエAの流儀とは。インタビューの一部を特別に紹介する。
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長友佑都がイタリアに渡って、はや8シーズンが過ぎようとしている。今年1月には平愛梨さんと結婚、ミラノでの暮らしには新たな彩りも加わった。
この日、練習を終え、イタリア・ミラノの中心部から少し離れたスタジオに現れた長友は、手慣れた様子ですぐに用意された衣装に袖を通しはじめる。
「ファッションでいちばん大切にしていることは?」と尋ねると、迷わず「サイズですね」と即答した。
「ファッションでは、サイズ感が大事だと思う。どんなにいいブランドもの、上質で高いものを着ていたとしても、サイズが合ってなければダメですね。いるじゃないですか、ブランドを着ていればいいみたいな人が。僕にはその考えがまるでなくて。
ファッションを意識するようになったのは、イタリアに来てからです。前のチームのチェゼーナのときはそこまでじゃなかったんですが、ミラノに来てからは特に気になるようになりました。やっぱり、選手たちもおしゃれだし、ちょっと街に出たら歩いている人たちがみんなめちゃくちゃセンスがいいですからね。そこでなんか変な格好はやっぱりできないですよね」
インタビュー前日、長友は、サンプドリアとのゲームのため、リグーリア州の州都ジェノヴァにいた。前泊で入り、ナイトゲーム終了後にミラノに戻って来た。ジェノヴァ~ミラノ間は約150キロだが、約600キロ離れたローマでのアウェー戦でも、やはり同日中にチャーター機などで帰って来るのがセリエAの流儀だという。