8月8日に第94回全国高校野球選手権大会が開幕する。昨夏、優勝し、今夏も甲子園出場を決めた日大三高は、厳しい練習とけがをさせない指導を両立させている。小倉全由(まさよし)監督が語った言葉のなかに、強さの秘訣が垣間見えた。

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 小倉監督は、指導者としての「目」をこう語る。

「われわれ指導者は、親から預かった選手を絶対に壊してはいけない。スポーツには事故やけががつきものですが、たとえそういう状況になっても、いい医師に診てもらい、いい治療のなかで選手が100%復活できるようにしてあげるのが、私たちの役目でもあります」

 わずかでも選手の異変に気づいたら、スポーツを専門とする医師に診てもらう。そして、正しい診断と的確な治療やリハビリを実施する。それだけに「練習には言い訳をさせません」と小倉監督はきっぱりと言う。

 強化合宿では血液検査も採り入れながら、からだの変化をチェックする。学校周辺のロードワークでは、スタッフたちが4カ所に分かれ、心臓発作などの際に使用するAED (自動体外式除細動器)も常備しながら、選手たちの状態を細かく確認して見守る。

「そんな強化合宿を経て、選手たちは自然と『自分を守る術』を知っていくのです。つまり、ストレッチの重要性を感じるんです」(同)

 練習前の準備体操や練習後のからだのケアは欠かさない。寮にある階段の踊り場では、学年に関係なく空き時間を利用して一緒になってストレッチをする。

「だからウチの選手は上級生になればなるほど、からだが柔らかくなっていきます」(同)

 普段から、選手たちは肩や膝関節の専門医による的確な治療を受け、または理学療法士やトレーナーのアドバイスを受けながらトレーニングをする。ハードな戦いが続く夏の甲子園ではなおさら、肉体的、または精神的なケアが不可欠。それは日頃からのからだに対する高い意識と環境があってこそ、なせるものだ。

※週刊朝日 2012年8月17・24日号