「小児期(0~15歳)で死亡率がいちばん高いのは0歳の新生児です。だからこそ、赤ちゃんへの医療を一生懸命に行うという伝統が今日まで受け継がれています。たとえば、子どもの脳障害をどう治したらいいか。将来的に後遺症が残るのでそれを最小限にとどめるにはどうしたらいいか。私たちは最先端の医療で取り組んでいます」
日下教授は、新生児が脳障害を起こした際に、どう診断して治療していくかを常日頃考え、研究に勤しんでいる。日下教授はこう抱負を語る。
「日本の新生児医療の水準は世界のトップです。このような医療を世界中に広めたい。大学ではブルネイ、タイ、ベトナム、ミャンマーの4カ国との医学交流をしており、まずこの分野での医療貢献を進めたい」
■地元との産学連携が医学研究躍進に寄与
精神神経科学分野は、浜松医科大が得意とし、大阪大に大きく差をつけている。その背景には産学連携がある。
「他大学に先駆けて精神疾患について脳画像を使って脳のメカニズム研究を行い、世界に認められる研究成果をあげています。浜松ホトニクスと連携することで、MRIやPETを使った発達障害や摂食障害などの最先端の研究を行っています」と、同大医学部精神医学講座の山末英典教授が説明する。
浜松ホトニクスは、光を通した電子計測、解析装置などの精密機器に強く、脳画像検査法であるMRIやPETなどの撮影技術に優れ、浜松医科大との研究交流が進んでいる。
また、同大同講座は、自閉スペクトラム症の新たな治療法開発のための医師主導治験、身体管理を必要とする摂食障害の診断治療、森田療法、認知行動療法、眼球運動による脱感作と再処理法など、専門性の高い診断や治療に定評がある。
■疼痛学で九州大に迫る関西医科大
疼痛学分野では、関西医科大が大きな研究成果をあげてきた。九州大に迫る勢いだ。
けがや炎症で筋肉や神経などに損傷が起き、それが長引くと脊髄から脳に痛みを伝える経路に変化が生じて慢性痛になる。疼痛学は痛みのメカニズムを解明し、慢性痛をどうすれば治療できるかを研究する学問である。