●箱根でつかめなかった栄光を求めて成長を続ける選手たち

 社会人2年目を迎える村山謙太(駒澤大卒5区)・紘太(城西大卒1区)、市田孝(大東文化大卒4区)・宏(大東文化大卒6区)という2組の双子と大六野秀畝(明治大卒3区)がそろって力をつけてきている旭化成は、個々の持ちタイムだけ見れば優勝候補の筆頭なのだが、九州予選では1位とわずか27秒差で2位。ニューイヤー駅伝にはうまく調整し、前年の7位は確実に上回り、優勝争いに絡みたいところだ。

 注目したいのは九州予選で旭化成を破ったMHPS(三菱日立パワーシステム)だ。ニューイヤー駅伝では、前年11位のチームだが、九州予選では、箱根ランナーたちが輝いた。3区区間賞の井上大仁(山梨学院大卒4区)は、2015年、大学4年時に箱根の3区で3位だった選手だ。今年のニューイヤー駅伝でも4区3位と上々のデビューを果たし、社会人になってから着実に力をつけてきている。

 井上とともにMHPSの予選1位通過に貢献した定方俊樹(東洋大卒7区)は、東洋大在学中に箱根で優勝2回、2位2回という黄金時代を経験している。2学年上に柏原竜二、同級生には設楽悠太・啓太がいた、あの時代だ。「山の神」と呼ばれた柏原が卒業した翌年、山登りの5区を走り、区間10位に終わったのがこの定方だった。この年、東洋大は優勝を逃し、次の年には優勝に返り咲くが、その優勝メンバーには定方の名前はなかった。東洋大黄金時代だっただけに悔しい思いも数多くしてきただろう選手が、九州予選ではMHPSのアンカーを務め、区間新の走りで旭化成を抜き去っている。ニューイヤー駅伝でもMHPS旋風を巻き起こせるか、注目したい。

●「ニューイヤー駅伝の顔」となった箱根ランナーたち

 定方と同じ年に箱根の5区を走り、区間賞をとった服部翔大(日体大卒6区)、定方のチームメイトだった設楽悠太(東洋大卒4区)のいるHondaも、2016年のニューイヤー駅伝では4位。今年は優勝も狙える力はあるが、東日本予選のときは、設楽、服部ともにもう一歩記録を伸ばしきれず5位通過となってしまった。ニューイヤー駅伝での巻き返しに期待したい。

 3連覇を目指すトヨタ自動車の最大のライバルとなりそうな東日本予選1位通過の日清食品グループにも、村澤明伸(東海大卒4区)、矢野圭吾(日体大卒5区)など多くの箱根ランナーたちがいる。村澤はトラック競技で世界大会出場も果たしており、前年6位ではあるが、地力には定評のある日清食品グループが、2012年以来の優勝に返り咲けるかどうかの鍵を握る選手といえるだろう。

 「箱根駅伝」という夢舞台を経験したランナーたちの、夢の続きを見ることができる。それがニューイヤー駅伝の醍醐味なのだ。(文・椎名桂子)

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