うろこの家に設置された世相サンタクロース。今年のサンタは、顔までもがトランプ米次期大統領に
うろこの家に設置された世相サンタクロース。今年のサンタは、顔までもがトランプ米次期大統領に
この記事の写真をすべて見る
話題を呼んだ2014年の世相サンタクロース(異人館うろこの家提供)
<br />
話題を呼んだ2014年の世相サンタクロース(異人館うろこの家提供)
2015年の世相サンタクロースはあのポーズ?(異人館うろこの家提供)
<br />
2015年の世相サンタクロースはあのポーズ?(異人館うろこの家提供)
毎年、クリスマスの時期になると世相サンタで注目を集めるうろこの家
<br />
毎年、クリスマスの時期になると世相サンタで注目を集めるうろこの家

 SMAP解散騒動、“ゲス不倫”に始まり、待機児童問題、東京五輪エンブレム、ポケモンGO、リオ五輪、プロ野球セ・リーグの広島優勝と、さまざまな話題が浮かんでは消えた2016年。そんな激動の年の終わりに話題をさらったあの人物が、神戸・異人館の「世相サンタクロース」に“異変”を起こしている。

【世相サンタクロースの写真はこちら】

 JR三ノ宮駅北側にある異人館街は、明治から大正時代にかけて建てられた洋風住宅が多く残る地域で、神戸市の観光名所となっている。その中の1軒、神戸市役所西側の居留地から、明治後期に移築されたうろこの家(旧ハリヤー邸)には、毎年、クリスマスの時期になると、その年の世相を反映したサンタクロースの人形たちが現れるのだ。

「サンタクロースがその年に活躍した人物を連れてやって来る」という設定で、サンタ自身も、話題の人物と絡めた特徴的なポーズを取っているのが見どころだ。例えば14年のサンタは、“号泣会見”を開いた野々村竜太郎元兵庫県議がみせた両手を耳にあてるポーズ、15年のサンタは、ラグビーの五郎丸歩選手がボールをける前に両手を合わせる“五郎丸ポーズ”をしていた。

 これまでは、サンタが話題のポーズを取っているだけだったのだが、ドタバタの16年はひと味違った。11月下旬、うろこの家に設置された世相サンタはなんと、ポーズだけでなく、顔まで米大統領選で選ばれた、実業家のドナルド・トランプ氏そのものになってしまったのだ。

“トランプサンタ”は金髪の特徴的なヘアスタイルで、左手に持つスマートフォンでポケモンGOに興じている。スマホには、世界中で大ヒットしたシンガー・ソングライター、ピコ太郎の楽曲「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」を思わせる、リンゴにペンが刺さった絵が描かれている。

 トランプサンタが連れてきたのは、体操の内村航平選手や柔道の大野将平選手、陸上のケンブリッジ飛鳥選手らリオ五輪で活躍した面々。スポーツ選手たちに交じって、小池百合子・東京都知事もいる。小池知事の人形がかざしている旗には、黒い五輪マークに「MORIDO」の文字が。良い話題ばかりではなかった16年を象徴しているかのようだ。

 なぜ16年はサンタの顔がトランプ氏なのか。その理由を、北野の異人館を管理、運営するうろこの家グループの企画/広報セクションディレクター、崎原朝香さんに聞いた。「実は、今年のサンタはハロウィーンで人気となったトランプ氏のマスクを着けているのです」

 崎原さんによると、サンタのポーズや連れてくる人物の候補は、毎年9月ごろ、スタッフらから出し合ったアイデアの中から専属デザイナーが決める。16年は当初、リオ五輪の閉会式で話題となった、土管の上に立つ安倍晋三首相を模したサンタを制作していたという。

 しかし、時の流れは速かった。その後も次々と話題の人物が現れ、サンタの完成を待たずして、すっかり“安倍マリオ”が古くさいイメージになってしまったのだ。そして、土壇場でのトランプ氏の登場により、デザイナーは、急ピッチでサンタの作り直しにかかった。その結果が、慌ててトランプ氏のマスクを着けたサンタというわけなのである。

「楽しい話題が浮かんでくるように作られたのが世相サンタですが、少しシニカルな視点も入れて面白みを出しています。今年は本当にめまぐるしい1年でした。世相サンタを見て振り返ってほしい」(崎原さん)

 世相サンタは12月25日まで展示される。このほか、北野の街では、異人館の中に隠れているサンタを探すイベント「ファインディング・サンタ」、それぞれ館の雰囲気に合わせて制作されたプリザーブドフラワーコンテスト作品、この季節ならではのテーブルコーディネートなども楽しめる。クリスマスの雰囲気にひたりながら、この1年の出来事に思いをはせてみてはいかがだろうか。(ライター・南文枝)