週刊朝日 2023年2月17日号より
週刊朝日 2023年2月17日号より

 ただし、ニッセイ基礎研究所の森下千鶴研究員によれば、株式分割を実施する企業数そのものは必ずしも増えているわけではないという。

「2022年4月から23年1月までに88社と、前年や前々年の同じ期間に比べて同程度か、少し下回る程度です。17年や18年など、多い時は百数十社に上ることもありました。いま注目されるのは、株式分割をあまりやってこなかった『値がさ株』が相次ぎ実施を発表したことが挙げられます」

 値がさ株とは株価の水準が高く、最低投資金額も高い銘柄のことだ。そうした銘柄が相次ぎ株式分割を行う背景の一つに、東京証券取引所の姿勢があるという。昨年10月、東証は上場企業に対し、最低投資金額が「5万円以上50万円未満」になるよう要請した。

 最低投資金額が100万円以上の38銘柄のリストを公表し、あえて名指しする形で投資単位の引き下げも求めた。これらの企業は今後、株式の分割を検討する可能性がある。証券ジャパン調査情報部の大谷正之部長はこう分析する。

「日本を代表するような銘柄を、一般の個人投資家でも買えるようにしてほしいということではないでしょうか。株式の運用益が非課税になる少額投資非課税制度(NISA)の投資枠は現状で年120万円。最低投資金額がそれを上回ると、投資の対象になりにくい」

 最低投資金額が100万円以上の会社は上場企業全体で40社近くある。ファーストリテイリングは、3月の分割後でも約260万円で、24年に予定されるNISA拡充後の投資枠(年240万円)でも届かない。

 では、投資にあたって株式分割はどうとらえたらよいのだろうか。

 先に述べたように、株式分割をしても企業自体の価値は変わらない。だが一般的に、最低投資金額が下がることでその銘柄に投資する投資家が増えて流動性が高まり、株式の魅力が上がる効果が指摘されている。また、経営者が株式分割をする判断を下したということは、市場から、将来も株価が値上がりする、つまりその企業が成長する自信があると受け止められるケースが多いようだ。

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