今月行われた強化試合では、小久保監督の采配面で多くの不安が残った。(写真:Getty Images)
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 11月10日から東京ドームで開催された強化試合を3勝1敗で終えた侍ジャパン。小久保裕紀監督は「4日間、点は結構取られましたが、いい強化試合になったと思います」と振り返ったが、見ている者からすれば期待よりも不安が大きく膨らんだ4試合となった。果たして、このまま来年3月のWBC本番を迎えていいのだろうか。

 不安の種は、4試合で計29失点を喫した投手陣以上に、チームとしてのコンセプト、ずばり采配面にある。まずは意識付けの部分。小久保監督はこの強化試合を前に「本番を見据えた、負けられない試合の中での試合運びになる。勝つための采配をしていきたい」と語っていたが、実際は選手をまんべんなく起用し、「勝利」よりも「テスト」の意味合いが濃かった。特に投手起用では、試合の流れを読んだ中での継投ではなく、あらかじめ試合前から決められた通りの交代が続いた。

 顕著だったのは第1戦の9回表だ。3対4とまだ逆転の希望が残っており、「勝利」のためにはもう1点もやれない状況だったが、明らかに不調だった山﨑康晃(DeNA)を引っ張った末に3失点。もちろん「テスト」が悪い訳ではなく、この時期の選手に無理をさせられない事情も分かるが、試合前に自ら「勝つための采配」を宣言したのならば、1死満塁となった時点で継投すべきだった。実際、スタンドからは「小久保!早よ、代えろ!」との罵声が飛んだ。昨秋の『プレミア12』では“継投失敗”が直接的な敗因だった訳であり、指揮官自らその苦い記憶を思い起こさせ、本番に向けて不安を増幅させる形となった。

 さらに第3戦、第4戦ではタイブレークにもつれ込み、「このチームでタイブレークを経験できたことが収穫だった」と小久保監督。同時に「昨日(第3戦)のタイブレークは初めての経験だったので、自分では考えているようでなかなか全部は見られていなかったですが、今日(第4戦)は余裕を持って見ることができた。やっぱり1試合経験するのとしないのとは違う」と意気揚々と自身の“成長”を語ったが、その言葉自体が指揮官としての経験不足を表している。それでなくとも、WBC本番ではこれまで以上に大きな重圧がかかり、想定外の場面が起こり得る。そこで指揮官が「初めてだから」と言ってフリーズしてしまっては、笑うに笑えない。

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