おのおのの売店のたたずまいと売り物に大きな違いはないが、店の「色」はそれぞれだ。言葉のやりとりがさらりとしている店、特定のペットボトルがちょっと安い店、周囲で休憩できるスペースが少し広い店など、さまざま。

 私のお気に入りは、いつも即興で愉快な声をかけてくれる、築地市場正門からまっすぐ入ったところにある売店だ。この店で、詳しい話を聞きながら、仕事の様子をみせてもらった。

 店づくりを始めるのは朝の2時すぎ。この店で働く唯一の男性である古田さんと、ここで働き始めて2年目の八木橋さんの二人で、黙々と開店準備を進める。

 プロパンガスのボンベにつながれたガスコンロに火をつけ、大きなやかんにお湯を沸かし、沸いたお湯を魔法瓶に入れる。カップ麺を購入した客は、この魔法瓶のお湯でカップ麺を作って食べるのだ。もうひとつのコンロでは、缶飲料を湯煎するためのお湯を、大きなタライで沸かしていた。温め終えた缶飲料は次々と発泡に収められていく。

 同時に、別の発泡に水を張り、すぐ近くにある氷販第一売り場で購入した、粉砕された氷の入ったバケツから氷をすくい入れ、缶飲料やペットボトル飲料を氷水につけていく。同じ商品ごとにわけずに、混ぜこぜに入れられるため、各種飲料が準備され終わった発泡は、実にカラフルだ。

 店のカウンター前に1.5メートルほどの長板を渡しスペースを少し広げ、そこにプラスチックのカゴに種類別に入れられた食べ物を並べていく。菓子パン、総菜パン、おにぎり、いなりずしなど。市場で働く人々の忙しさを考慮し、箸やフォークなどを使う必要のない、買ってすぐに片手で食べられるものばかりだ。また、スナック菓子やチョコレート類など、仕事の最中にちょっとつまめるような菓子類も、多く並べられていた。また、店内には、たばこが各種。コンビニとほぼ変わらないだけの種類がそろえられている。

 3時になり店づくりが終わるころ、この道30年に迫る梅本さんが出勤。ダミ声で「おはよう」と声をかけてくれた。

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