日本は農業や製造業で培ってきた、横並びで一斉に働き休む風土が根強くある。
「みんなで一緒、が心地よいのです。土日や祝日ならみんなで『いっせーの』と休むけど、自分一人だけ休むのは心地がよくないのです。でも、『いっせーの』じゃないほうが、今までにない新しいサービスを考えられたり、自分らしい生き方を見つけられるように思います」(藤井さん)
社員が休暇を取りやすいよう、企業が率先して取り組んでいる事例もある。
リクルートは21年から年間休日を15日増やして145日にし、年間平均で週休2.8日を実現した。この中には個人で自由に取得できる休みが含まれ、毎月取ることも、大型連休や週末とあわせてまとめて取ることもできる。ただ、1日あたりの所定労働時間を30分延ばし、年間所定労働時間、給与はともに変わらない。
実施初年は社員の98%が計画通りに休みを取得できた。同社人事統括室の蝦名秀俊室長によると、休みを取る前は、スケジュールを前倒しで進めるなど、やはり忙しくなるという。それでも、新たな休日をつくったことで休む抵抗感はめっきり薄れた。同時に「自分だけが把握している仕事」を減らし、休んでも仕事が回るようにするための現場の工夫が進んだからだ。
たとえば、外部とのメールでは、「CC」にメンバーのアドレスを入れて、自分が休んでもメンバーに引き継げるようにする。社員同士の個別チャットは廃止し、業務を担うチーム全体のチャットを活用する。休んでも、チャットやメールの履歴を読めばカバーでき、会議も後から録画を見ることができる。
■自分の人生を豊かに
「結果的に総労働時間は1人当たり年平均50時間ほど短くなり、生産性は上がりました。休日があるからこそ、一人一人が今までになかった工夫をしたのではないかと思います」(蝦名さん)
休日の使い方は人それぞれ。興味のあった大学院に通い出した社員もいる。不妊治療の予約を入れる人もいるし、もちろん、普通の土日のように「ゆっくり休んでもいい」と言う。