■早朝から日光を浴びるとからだが目覚めてしまう
朝は決まった時刻に起きるようにしましょう。夏場、日の出の時刻が早くなると、それにともなってさらに早起きになってしまう高齢者がいます。日光でからだが目覚めてしまうので、あえて光を浴びないように、光を遮るカーテンを使うなどし、早起きになりすぎないように気をつけましょう。
昼寝については、30分程度の昼寝が認知症の予防に効果があると示した研究報告があります。
「メモリークリニックお茶の水」院長の朝田隆医師がおこなった研究によると、毎日30分程度の昼寝が認知症の発症リスクを抑えるという結果が出ています。一方、昼寝が1時間以上だと、認知症の発症リスクが高まります。
■嗅神経を救うことで認知症の進行抑制と予防
短時間の昼寝がいいとされる理由は、午後の眠気をとるためといわれます。午後、眠くならずにちゃんと起きていられると、夜、しっかり眠れるようになります。つまり、昼寝は睡眠時間を稼いだり、夜の睡眠を補ったりするものではありません。眠気をとることと、睡眠は別のものです。昼寝が長いと、寝ぼけが起きてしまい、午後、不活発になります。
鳥取大学医学部保健学科教授の浦上克哉医師は、「アロマセラピー」による認知症の予防、進行抑制の効果を研究しています。自然の植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を単独、または混ぜて作るアロマオイルで「いい睡眠」を促します。
「いい睡眠」とは、レム睡眠とノンレム睡眠が交互に出る睡眠であり、悪い睡眠は、その境目がなくなっていきます。本人の感覚でいえば、朝起きた時の爽快感があれば「いい睡眠」となります。
浦上医師の研究では、真正ラベンダーとスイートオレンジを2対1の割合で混ぜてディフューザーという精油を噴霧する道具に入れて香りを拡散させ実験したところ、認知症の人は約1カ月後に認知機能が改善しました。
「認知症は、脳の中の記憶などをつかさどる海馬よりも先に、嗅神経がダメージを受けることがわかっています。物忘れになるより前に、匂いがわからないという症状が起きるのです。そこで、先に嗅神経を救う方法として、アロマセラピーを研究しています。安全に誰でもできるうえに、認知症の進行抑制と、認知症を発症しにくくする予防の両方に効果があります」(浦上医師)
使う精油は、オーガニックのものがよく、同じような香りでも化学合成した精油は副作用が出る危険性があるので注意しましょう。(取材・文/編集部・杉村健)
※週刊朝日ムック『すべてがわかる 認知症2016』より