東京の人にはあまり馴染みがないが、6月という意味を表す「水無月(みなづき)」という名を持つ和菓子が、京都では季節の物として存在する。最近では東京でも有名な和菓子店では、6月限定で販売しているところがかなり増えたが、この「水無月」、実はある古くから続く行事に添えられたもののひとつなのだ。今回は、その行事「夏越の祓」についてのお話。
●「大祓」のお蕎麦とお菓子
神社では1年に2回、「大祓」という行事が行なわれている。「大祓」という名の通り、さまざまな厄難を払うという意味で、奈良時代以前にすでに宮中行事として制定されていた。1回はみなさんご存じの大みそかに各地で行われる行事。この時に麺が切れることによって「厄断ち」ができるとして、年越し蕎麦を食べる習慣ができた。そして、もう1回が6月30日で、この時に「水無月」が登場する。
ところで「大祓」は昔から民間に広く知られていたのかといえば、なかなかそうもいかず、年越しのそばや和菓子・水無月は各地で発展していくのだが、神事としての広まりは、明治以降のこととなる。
●夏越の祓の儀式とは
6月の「大祓」は「夏越(なごし)の祓」とも言われ、多くの神社では「茅の輪くぐり」や「人形代(ひとかたしろ)祓」などが行われる。この時季に設置される「茅の輪」をくぐることにより、体についた穢れなどを落とし、自分の身代わりとなる「人形代」に罪などを移して清めてもらう。
現代では、夏の到来をそれほど恐れないが、昔は大変な季節だった。蚊や水がいろいろな病気や細菌を持ち込み、多くの人が亡くなる季節でもあった。日照りで水不足や食糧不足になることもあったにちがいない。
災厄を少しでも軽くするため、半年の間にたまった罪や穢れを一度きれいに払ってから夏を迎えよう、という考えからこうした行事ができたのだろう。
●「茅の輪」と「人形代」の由来
「茅の輪」とは、「蘇民将来」という逸話から生まれたものだ。
スサノオ(伊勢神宮の神さま・天照大神の弟神)が姿を変えた旅の途中、一夜の宿を乞うたところ、裕福な巨旦将来(こたんしょうらい)はそのみすぼらしい姿を見て断った。