中京学院大の主力はそれぞれ、このチームがなければ野球を辞めていたかもしれない立場だった。今大会のMVPに選ばれた山崎善隆捕手、栁川優太投手はいずれも経済的な理由で進学を諦めかけていた選手。しかしアルバイトをしながらプレーできる環境に救われ、道が開けた。ドラフト1位指名濃厚の吉川尚輝遊撃手は、東都の名門・亜細亜大に合格し、入学前から練習にも参加していた。しかし環境に馴染めず故郷の岐阜に戻り、ぎりぎりで進路を変更した。
無名で小規模な、地方の、新興勢力が躍進を遂げる――。それが近年の傾向だ。
大学野球のすそ野が広がったことで、多くの才能にチャンスが与えられている。4年間は逆転を起こすために十分な時間だ。全国に英傑が散らばり、次々に下剋上を起こす。そんな楽しい戦国時代の象徴が、全日本大学野球選手権における中京学院大の躍進だった。
(文・大島和人)