若手落語家の筆頭 春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)1978年生まれ。新著『春風亭一之輔のおもしろ落語入門』(小学館刊)も各方面で話題(撮影/川口賢典[STOIQUE]、スタイリング/栃木雅広[quilt])
若手落語家の筆頭 春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)
1978年生まれ。新著『春風亭一之輔のおもしろ落語入門』(小学館刊)も各方面で話題(撮影/川口賢典[STOIQUE]、スタイリング/栃木雅広[quilt])
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 ニッポンを代表する粋なカルチャー、落語がブームである。『アエラスタイルマガジン 31号 』(朝日新聞出版)でも落語特集が組まれ、春風亭一之輔や柳亭市弥といった、ブームを引っ張る“男前”な若手落語家たちを紹介している。新しい落語ムーブメントとは、どんなものなのか?

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いま、東京のアフターファイブに異変が起きている。落語ブームだ。近年、落語には何度かブームの波があった。落語家を主人公としたテレビドラマ『タイガー&ドラゴン』『ちりとてちん』などのヒットでそれまで落語に縁のなかった若い人たちが寄席や落語会を訪れるようになった。しかしここ1、2年の落語ブームはいままでのとはちょっと違う。勤め帰りの女性たちまでが落語を聴きに押しかけているのだ。

 かつては見受けられなかった光景が出来している。若手の落語会では、終演後、高座を終えて汗だくの着物姿で落語家たちが客を「お見送り」する。出口で握手、撮影、サインなどのファンサービスに応じ、追っかけのファンはプレゼントを抱えて「出待ち」する。さながらアイドルのコンサート風景だ。

 小さな小屋(会場)も飛躍的に増えた。寄席形式の小さな会場がいくつか誕生し、狭いバーや小さなレストランの中、そば屋の2階の座敷に至るまで、座布団さえ置けばどこでも落語会場となる。ワンコイン寄席と呼ばれる500円の落語会も人気で、定席(常設の寄席)で夜9時半から11時まで開かれる「深夜寄席」には毎回200人を超える若い客たちが並ぶ。“初心者でも楽しめる”を謳った「渋谷らくご」や、“成りあがり”を目指す若手ユニットの落語会「成金」は毎回満員札止めだ。

 現在、落語家は東西合わせて約700人。東京在住の約500人の落語家たちが、東京の定席をはじめとして1000人収容の大ホールから、20人も入れば満杯になるようなさな会場までを埋め尽くす。居酒屋の小さな座敷なども含めると、1カ月間で東京近辺で開かれる“落語会”はなんと700席を超えるのだ。これは単純なブームなどではない。ハンサムでクールなサブカルチャーの誕生といっていい。いま、新しい落語ムーブメントが起きている。(文・守田梢路)

※アエラスタイルマガジン31号より抜粋