「さっきの彼女、素敵なんだけど、“幸薄いオーラ”が漂っていて。今日はデートの席だから、申し訳ないけれど幸せオーラを漂わしているあっちのあの子を担当に変えてもらえないかな?」
担当のウエートレスを変えると、彼は、サチコさんに、運気や占い、宗教、超能力の話をにこやかに延々と続ける。その間、サチコさんに口を挟ませなかった。
「気持ち悪さでは、うさぎぬいぐるみの彼も同じです。でも、この彼は怖くて。耐えられない気持ち悪さです」
結局、彼もこのデートで“終止符”を打った。
もっとも“ゲス度”が高いのは、次に紹介する神奈川県在住の保育士、ナナコさん(35)のお見合い相手で薬剤師の彼(39)が最強だ。
3回目のデートとなったある日、ランチの後、近所だという彼の自宅に招かれた。少し早いかなと思ったが持ち家の戸建てをみてみたいという好奇心が勝った。そしてその家に足を踏み入れると同時、彼はナナコさんに抱きついてきた。
「3回目のデートだから。いいよね? みんなそうしてるよね? ね!」
とっさのことで身動きが取れなかったが、それでも我を取り戻したナナコさんは彼を振り切り走って逃げた。しかし所詮、女性の足だ。男性には及ばない。すぐに追いつかれた。そして彼はナナコさんの足元に縋り付き、大声で泣きながら公衆の面前でこう叫んだ。
「うわぁーーーんん。僕は結婚相談所に100万円近く払ってるんだよぉぉ。それで3回目のデートで逃げるって酷いじゃないか。恋愛マニュアル本にも『3回目で決めろ!』って書いてあるんだぞ。君も大人の女性ならわかるだろぉぉ。うわぁーーーん。これまでのデート代と時間と、カネも返せぇ!!」
軟派も極めれば硬派になるという。だがゲスは極めてもゲスでしかないといったところか。
(ライター・大江美椿子)