関西の名門大学の博士課程卒。だが研究職に就けなかった、いわゆるオーバードクターだ。ルックスこそジャニーズ系のイケメンだが、実質、無職。収入はパートタイムで行なうPCインストラクターと試験監督など大学内で院生向けに募集されるアルバイト収入のみ。知り合った当時の年収は150万円に満たなかった。ずっと研究生活ひと筋。だから友達もいない。もちろん女性との交際経験もない。
2人の共通の友人が主催する異業種交流会で、サチコさんはショウヘイさんの状況を聞き、「結婚するならこの人しかいない」と「天の声」が聞こえたという。
女性経験がないのなら私が彼を大切にすれば、きっと彼は私だけをずっとみていてくれるはずだ。研究活動は安定した生活があってこそ出来る。ならわが家にくればいい。彼には家事一切を担ってもらい、その合間に研究活動をすればいい。離婚以来、父がいないことで寂しい思いをさせてきた娘にとっても、いい父であり兄にもなってくれるだろう。何より博士課程卒の高学歴。中学受験を控えた娘にとってもいい話だ。友だちもいないのなら、居場所はわが家だけだ。皆が幸せになれる――そこにはこんなサチコさんの思いがあった。
以来、サチコさんからショウヘイさんへの猛アプローチがはじまった。日々、LINEでのメッセージ交換、自宅に招いて娘と3人で食事し、休日にはキャンプにも出掛けた。
「彼には、わが家の主人として、ただデーンといてさえくれればそれでいいのです。あくまでも私と娘を支える“主人”として。その主人と娘のために私は家計を担う。いい役割分担です。主人も誰に引け目を感じることはありません」
こう話すサチコさんに、両親は「息子がひとり増えた」と大歓迎。一方、娘も「お父さんというよりお兄さん」と手放しで喜ぶ。夫であるショウヘイさんの両親もまた、サチコさんに感謝の気持ちを表す。ショウヘイさんの母は息子の“嫁ぎ先”であるサチコさんについてこう話す。