「僕には絶対にない才能だったので、型にはめてしまっては圭がテニスを嫌いになってしまうだろうし、発想力が失われてしまうんじゃないかと思ったわけです」
昨年の全米オープンで準優勝し、世界のトップ5の常連となった錦織選手。世界ランキング46位だった松岡さんを記録の上ではをはるかに凌駕(りょうが)した錦織選手だが、まだ持っていない勲章が一つある。
1995年のウィンブルドン選手権で8強入りをした松岡さんは、「ラスト8クラブ」のメンバーで、名誉会員の称号を持つ。ウィンブルドンのシングルスで準々決勝に残った選手に敬意を表し、主催者が毎年、大会のチケットを用意するのだ。
本書は2008年のウィンブルドン以降、錦織選手の取材を続ける朝日新聞スポーツ部の稲垣康介記者が、8年間に及ぶ取材資料を元に、錦織選手本人、両親、スタッフなどを丁寧に取材し、書き下ろした渾身の1冊。錦織選手も同書の帯で、こう綴っている。
【言葉は受け取る人によって違うと思う一方で、切り取られた言葉がひとり歩きすると、正直、戸惑うこともある。そんな中、この本は僕の言葉の「本当の意味」を伝えてくれている】