「サンマは目黒に限る」ということで、さんま料理が自慢の居酒屋「駒八 目黒さんまセンター」に、その生態を知っているかと聞いてみた。寺澤善行店長いわく「寿命が2年? 初めて知った! 勉強になりました」とのこと。ベテラン主婦数人にも聞いてみたが、「DHA・EPAが豊富で血栓予防に効果がある」「くちばしが黄色かオレンジ色で手に持つとピンと立つのが新鮮」「旬の時期以外なら生より旬の時期に冷凍したものの方がおいしい」など、食に関する知識は尽きないものの、寿命は誰も知らなかった。
サンマは100%天然で国産だけに、養殖や稚魚を放流する必要がないにもかかわらず、ほかの魚よりも熱心に生態が研究されている。しかし、環境に合わせて生活も変化するため、一生の全容をつかむのは難しかった。身近な魚でありながら、研究の対象としてはかなり手ごわい存在だったのだ。
前出の巣山さんによると「この秋、食卓に並んでいるサンマは2013年10月から14年4月ごろまでに誕生したものだろう」とのこと。スーパーで売られているサンマはおよそ30センチ。大きさがそろっている。
「サンマは産卵する時期・場所・環境がばらばらで、生育状況も全く異なる。漁師は太って大きなものを狙い、小ぶりなものは加工品になるので、スーパーでお目にかかるのは、えりすぐりのエリートばかり」(巣山さん)
近年、公海上で外国船によるサンマ漁が盛んだと聞くが、いまのところ日本人の口に入るサンマは国産で、十分確保されているようだ。寿命の短いサンマを旬の時期に、しかも「エリート」を口にできることはぜいたく……。秋の味覚を心して味わいたい。
(ライター・若林朋子)