練習に励むNOMOベースボールクラブの選手たち(豊岡市のこうのとりスタジアムで)
練習に励むNOMOベースボールクラブの選手たち(豊岡市のこうのとりスタジアムで)
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30度を超える暑さの中、懸命に練習を続ける(豊岡市のこうのとりスタジアムで)
30度を超える暑さの中、懸命に練習を続ける(豊岡市のこうのとりスタジアムで)
多様な年齢、経験を持つ選手たちが集まる。プロへの夢は果たせるのか(豊岡市のこうのとりスタジアムで)
多様な年齢、経験を持つ選手たちが集まる。プロへの夢は果たせるのか(豊岡市のこうのとりスタジアムで)

 多くの才能ある若者たちが、野球を続けられる環境を求めているが、なかなか得られずにいる。そんな現実を知った元メジャーリーグ投手、野茂英雄さんは、プロを目指して奮闘する彼らの受け皿になろうと、NOMOベースボールクラブ(兵庫県豊岡市)を設立。「夢をあきらめるな。」野茂さんの思いを、選手たちはどう受け止めているのだろうか。

 2015年7月末、豊岡市のこうのとりスタジアム。気温30度を超える暑さの中、淡々と練習する選手たちがいた。ティーバッティングやフリーバッティング、守備練習といったメニューをこなしていく。高校の野球部のように声を出す場面はほとんどないが、その表情は真剣だ。練習の後には、それぞれが勤務する温泉旅館での仕事が待っている。

 クラブでは、特に年齢制限は設けていない。今春高校を卒業したばかりから、大学や社会人のクラブで野球をしてきた20代半ばまで、幅広い年齢層の選手たちがそろう。関西を中心に、東京や福岡など全国各地から、野球ができる環境を求めて集まってきているのだ。

 新人の内野手、兵庫県加西市出身の柴田賢司さん(18)は、プロ選手も輩出している神戸弘陵高校を卒業後、クラブに入った。高校野球部の監督に薦められたのがきっかけだが、「メジャーにも行き、プロに近い存在である野茂さんが設立したクラブなので、チャンスが得られると思った」と話す。「大学進学が難しく、野球を続けられる場所を探していた」ともいう。

 15年3月に高知で行われた春季キャンプから合流。そこで初めて野茂さんを見て、独特のオーラを感じた。大会前の練習では、野茂さんから守備などの指導を受けることもあるという。社会人の高卒選手は3年間、ドラフト会議で指名を受けられないという決まりがあるため、「3年は(クラブに)いたい。まずは1年目でしっかり結果を残したい」と意気込む。

 希望に燃える新人がいる一方で、進路にあせりを抱く選手もいる。クラブの主将で捕手、香川卓哉さん(23)は、広島の強豪である広陵高校を卒業後、大阪商業大学に進み、昨年、クラブに入団した。「友人がいる大阪にいたら雑念が入ってしまう。ここなら野球に集中できると思った」のが理由だ。

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