20分程度で、可愛らしいお弁当の完成だ。ただただ感心するしかない出来栄え。そんな石野さんだが、「まさか自分がお弁当にはまるとは思わなかった」と話す。

 もともとは、料理はしないタイプ。保育園児だった苺さんに最初に作ったお弁当は、豆腐とわかめに小さなおにぎりが入っただけのものだった。保育園の連絡帳には、1ページ半にわたり、先生からの「おしかりの言葉」が書かれていたという。

 いろいろ作ってみたが、苺さんはほとんど食べてくれず、お弁当箱はいつも重たいまま戻ってきた。石野さん自身は、母親のお弁当には楽しい思い出ばかり。「食べてくれないのはさみしい」。そんな時に図書館で見つけたのが、可愛らしいお弁当の本だった。「これなら楽しそう」。おにぎりにキッチンばさみで切った海苔で顔を作り、枝豆を耳にして、犬のキャラクターを作ってみた。

 その日のお弁当箱は、初めて空っぽになって返ってきた。連絡帳には、2ページにわたって、先生からの「おほめの言葉」がつづられていた。それから一気にお弁当にはまり、現在では仕事になっている。

 石野さんの話を聞いて、なんだか勇気づけられた気がした。2歳半の娘は、今回作ってもらったお弁当箱のふたを開けるなり、パンダを「くまさん」と言って、目を輝かせて食べていた。へえ、キャラ弁って、こういうことなのか。自分が作ったお弁当でもないのに、うれしくなった。

「またくまさん作って」と娘は言う。もうすぐ保育園の遠足がある。ちょっと面倒くさいけれど、今こそ、敬遠してきたキャラ弁に挑戦する時かもしれない。幸い、グッズはそろっていることだし。

(ライター・南文枝)

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