中日ドラゴンズの山本昌投手(49)が9月5日の阪神戦で球界最年長勝利をあげた。1950年に阪急ブレーブス(当時)の浜崎真二がマークした出場、登板、先発、奪三振、被安打、与四球、打席のプロ野球最年長記録も、まとめて更新した。1軍で出場した実働年数も28年に伸ばし、工藤公康(西武ほか)の29年に次ぐ単独2位とした。
山本昌は、83年にドラフト5位で中日に入団。83年といえば、任天堂がファミコンを発売した年だ。夏の甲子園では、1年生コンビの桑田真澄と清原和博が活躍し、PL学園を全国制覇に導いている。
4年間、一軍経験がなかった山本昌だが、88年に中日が業務提携を結んでいた米大リーグ・ロサンゼルス・ドジャースへの野球留学で眠れる素質を開花させた。シーズン終盤に帰国すると、8月30日の広島戦でプロ初勝利。このシーズンは5勝をあげる活躍をみせ、6年ぶりの中日のセ・リーグ制覇に貢献した。
平均在籍年数が8年間ともいわれるプロ野球の世界で、山本昌が30年以上も現役を続けられる理由は何か。それは抜群の制球力を持ち、四球が極めて少ないことだ。
山本昌が1軍に定着した89年から昨年まで、9イニングあたりの与四球率はわずか2.31。つまり、一試合を投げても四球を3個以上は与えていない計算である。しかも、与四球率が3.00以上だったシーズンは09年(4.00)と昨年(3.57)だけだ。
通算投球回上位40人の中では13位にあたる与四球率で、東尾修(元西武)、別所毅彦(元巨人)、杉下茂(元中日)、秋山登(元大洋)といった歴代の名投手を上回る。40代になってからの与四球率も2.32と、衰えを見せていないのも驚異的だ。
昨年シーズンのセ・リーグ平均与四球率3.25、パ・リーグ平均の3.18と比べても、山本昌がどれほど優れているかわかる。
記録を達成した5日の阪神戦でも5イニングで1個しか四球を与えなかった。齢49にして、そのコントロールは衰えしらずである。
これまでに山本昌が積み上げたアウトの数は1万15個(9月5日現在)。気が遠くなるような道のりの陰には、驚くべき制球力があったのだ。
(野球ライター・京都純典)