19日(日本時間20日)、365日のうち300日は晴天とも言われるナタル。堅守のギリシャと戦うグループリーグ突破のための大一番は、雨の影響もあったのか、スコアレスドローという結果に終わった。前回に引き続き、会場にいたからこそ感じたこと、気づいたことを紹介したい。
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「本田はプレーしてない。香川はよかったね」そう語るブラジル人が何人もいた。「サッカーを楽しむ」という視点から見れば、両選手の今日のできはそのように見えるのだろう。会場に観戦に来た現地サポーターはどちらかの国を応援するということもあるが、むしろ純粋にサッカーそのものを楽しみに来ているのだ。象徴するような出来事があった。前半37分、ギリシャのキャプテン、カツラニスの退場劇だ。会場を訪れたブラジル人の半数以上が、日本を応援してくれていたけど、この退場に関してブラジル人が声を上げることはなかった。
もちろん、敵国に退場者が出ればどんな国のサポーターも喜ぶことだろう。だが、会場全体の雰囲気としては、「これでつまらない試合になるかもしれない……」という予感があったように思う。そのことは知っておいてもいいのではないか。さらに次の出来事にも注目したい。
ワールドカップやオリンピックなどの観客席で見られる「ウェーブ」が起きた時だった。日本人サポーターが固まっているエリアで、ウェーブが止まってしまったのだ。ワールドカップというイベントを楽しもうというブラジル人や各国の外国人サポーターは少し残念に思ったようだ。「ウェーブは試合がつまらないから盛り上げるためにする」という意見もあるように、ウェーブが起きれば、会場全体の熱気は上がる。ひいては攻める時間が多かった日本にとっては有利に運ぶはずなのに……。
この試合の3日前、私は同時刻同会場で開催されたグループG「ガーナ対アメリカ」を観戦した。日本の数倍も凄まじいアメリカサポーターの熱気は、今でも忘れられない。それは、単純に彼らの人数が多かったというだけではない。「U・S・A!」という大合唱。この単純な掛け声は途切れることなく続き、声援は成長していった。その中で、“何かが起こりそうだ”という雰囲気が生まれていたのだ。その結果はご存知の通り、2-1と接戦を制することができた。
「日本の応援は独創的で、すごくいい」と何度も外国人サポーターから褒めてもらった。だからこそ、彼らも一緒になって日本の応援歌を歌おうとしてくれたし、実際に歌ってくれてもいた。だが、ある応援歌がはじまり、リズムやメロディーが外国人サポーターにも理解され、歌がスタジアム全体に広がりつつあるなと思う頃に、その応援歌が終わり別の歌に変わってしまう。
せっかく一体となって盛り上がり始めた会場では、次の応援歌についていけず、困惑した表情のブラジル人を何人も見た。せっかく良い歌なのに、少しもったいない気がしたのは私だけだろうか。
今回思ったのは、意外なほど“何かが起こりそうだ”という雰囲気が試合には大事だということ。心の底からサッカーを楽しみたいブラジル人やその他の外国人サポーターを「日本の味方につける」には、もう少し工夫が必要なのかもしれない。
会場全体が日本サポーターになる。それ以上の後押しはないのだから。