危機の最中は、危険に対処するためにアドレナリンが出て疲労を感じさせませんし、環境の変化も、当初は緊張感が勝るために、あまり疲労を感じません。
しかし普段よりも過剰な活動をしている分は、確実に疲労として蓄積されます。これが自覚できない、「ステルス疲労」です。
戦場でも、警戒レベルが高いときは、兵士はむしろ元気です。問題は、それが低下した時で、これまで溜め込んできた疲労が急に表面化します。
■ステルス疲労を回復させる、一番の方法
例年、4月の新入学や異動による新しい職場環境の緊張がほぐれた時期にやってくるのが、5月・6月病です。さらに今年は、コロナ・ストレスで、2月から4月の環境変化に対応するための負担が多くなっています。いつもより早く、またいつもより少し重い5月病が自分自身や家族、あるいは職場の仲間に出てくることを想定しておく必要があります。
子どもなら、不登校、職場なら新人の突然の退職願いなどを想定しておいたほうがいいでしょう。年配の人は、コロナ以外の体調不良に見舞われやすくなります。若い人に較べて、エネルギー量が減っているので、疲労が余計にこたえるからです。
ストレスは、ストレスの量だけで決まるわけではありません。これまで溜め込んだストレスの量と、ストレスを減らす力などの差し引きで決まります。現在は、蓄積疲労が溜まっているだけでなく、ストレス解消手段が減少しています。ジム通いがストレス解消法だった人にとっては、単に娯楽が少なくなったという以上に、新たなストレスを溜めこんでいるのです。
また、時差出勤やテレワークで、普段の忙しさに較べたら、休むことができていると思っている人もいるでしょう。「自分は休めている」という印象を持ちがちですが、テレワークという変化に対応するだけでも、大きな負担なのです。「自分は休めている」も、ステルス疲労を溜めている人に多い思い込みなので、注意が必要です。