子どもは、「過去」という比較の対象が少ないのです。おそらく、小学生にとって、このような行動制限や各国首脳の報道、オリンピック延期の議論がもたらす世の中の「ただならない雰囲気」は、初めてのことです。
何が起こっているのか、これからどうなるのか、医学的な知識や情報とその理解力がない子ども達は、「アウトブレイク」「院内感染」「クラスター」「パンデミック」「オーバーシュート」「ロックダウン」という聞きなれない言葉が増えるたび、不安を増していきます。
人は、自分でリスク判断ができないとき、信頼できる他者を観察して判断しようとします。つまりこういう時、子どもは、「親の顔」を見て世の中のリスクを予測するのです。だから今こそ、大人がしっかりするべきなのです。大人が、きちんと自分で情報を整理し、自分の言葉で子どもにリスクとその対処法を説明することが大事です。
狭いところで人が大勢、集まるような場所はしばらく避けたほうがいいけど、公園なら遊んでも大丈夫。そのかわり、外から帰ったら、しっかり手洗いしようね、とつとめて具体的に話す。そして、親も落ち着いて、言行一致した行動を取ることです。子どもは親の言葉ではなく、背中を見ています。
さらに特に気をつけたいのが、家族内の人間関係です。1カ月におよぶ休校や、通勤・外出の自粛で、家族での時間が急に増えています。一見、良いことのように思えますが、慣れていない、初めての状況なので、実は家族全員のストレスが多くなっているはずです。子どもは自由に遊んでいるだけだからストレスは軽い、と考えるのは間違っています。
また、不安やストレスは、イライラや不機嫌、無気力などのいろんな形で表現されやすいということも、知っておくべきです。その中でもイライラは最も出やすい表現です。子どもは不安やストレスをきちんと言葉で表現できず、態度でぶつけてくるかもしれません。いつもと違う態度が出ることも予測して、大人がそれを「どん」と受け止めることが大切です。