新型コロナウイルスで、小中高が全国一斉休校になり、戸惑う子どもや家族。想定外の事態に、子どもも大人もストレスを溜めている。
そんな子どもや家族にのしかかる「コロナ・ストレス」にどのように対応すればいいのか。自衛隊で長年、メンタル教官として災害派遣など厳しいストレスと向き合う自衛官の心の健康を支え、『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新書)の著書もある下園壮太氏に話を伺った。短期集中連載(全4回)でお送りする。3回目は「子どもや家族のストレスへの対応」について。
※第2回「『コロナうつ』に陥らないために必要なのは“不安”と“情報”の関係を知ること 自衛隊メンタル教官に聞いた」はこちら
■コロナ・ストレスが人間関係をむしばむ
危機の時は、それぞれが「自己保存」に走ります。ところが「人」は本来、力を合わせてリスクを乗り越える動物です。
目は前にしかない。だから背後は危ない。手はふたつしかない。2点で重いものを持ち上げるのは重いし、バランスも悪い。誰かと共同で持ち上げれば、安全も確保できるし、作業もうまくいく。そのために人は言葉を覚えたのです。ボス猿でも、群れから離れると毛繕いをする相手がいなくてすぐ死んでしまうといいます。
「相手のためは自分のため」、それができるほうが、戦争にも勝ちます。だから昔から軍隊は団結を重要視してきました。
ところが今の時代、社会が発展して、人々が協働しなくても生きていけるようになりました。自国主義、自分主義が横行しています。マスクを買い求めたのも、人のためというより自分のためと考えた人が多かった。この漠然とした不安が続くと、誰もがイライラし、猜疑心が強くなり、一層協力の雰囲気が作れなくなってきます。政府や医療従事者の動きに対しても、評価や感謝するより、非難のほうが多くなっていました。
ところが、最近少し風向きが変わってきているように思います。ヨーロッパやアメリカの状況が報道され始めたからです。前回は、原始的な不安は「比較」によって冷静になれる可能性を指摘しましたが、まさにこの比較の対象ができたのです。「イタリアに比べて、感染の拡大はまだまし」といった感覚が生まれました。
その一方で、世界の首脳が「戦争状態」などと表現する今の状況で、さらにじわじわと不安が強まっているのが、子どもではないでしょうか。