※写真はイメージです (Getty Images)
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「『3月6日付でPCR検査が保険適用される』と発表された直後から、『希望すれば誰でもすぐに検査を受けられる』と勘違いした方の問い合わせが急増し、その対応に現場はてんてこまい。本来の業務が手につかない状態です」

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 やつれた表情でこう話すのは、都内にある約300床の地域中核病院の職員・Aさんだ。最近は帰宅も遅く、疲れがたまっている状態という。

「陽性から陰性、そして陽性に戻ったり、亡くなられる感染者や無症状病原体保有者もいたりで、有効なワクチンがありません。不明な点ばかりなので、不安になられるのはわかります。でも新聞やテレビの報道を断片的に捉え、自分勝手に判断する方があまりにも多い」

 一方、SNSのフェイク情報に翻弄(ほんろう)される医療機関は少なくない。

「ある病院は2月下旬、『罹患(りかん)者発覚』と虚偽のツイートをされ、最近も『医師が感染』と書かれました。その対応にも追われていて完全な業務妨害です」

 しかも外来患者は目に見えて減っている。

「外出控えの影響だと思いますが、昨年12月に比べると3月は1日平均1割以上少ない」

 それはボディーブローのように病院経営を圧迫している。

「どこの病院でも同じ傾向にあり、特に小規模のクリニックさんが厳しい。看護師を解雇し始めた医院もあるそうです」

 それでいて、消毒液やマスクの消費量は倍以上。トイレのエアタオル使用中止に伴うペーパータオルの復活など、経費も急増している。Aさんの病院では、自家製マスクの推奨、消毒液を病院内で作るなどの経費節約を始めた。

「そのくせ院内感染にビクビクしています。万が一、感染者が出て外来閉鎖になったら潰れかねません。厚生労働省は医療現場を疲弊させない方策をとってほしい」

 果たして日本の医療は持ちこたえることができるのだろうか。まさに正念場だ。(高鍬真之)

週刊朝日  2020年3月27日号