米国新車販売の世界で、日本車がトップを占める現象は今に始まったことではない。カムリとアコードのトップ争いは1990年代から続いているし、アメリカが本場と言われてきたSUVにおいてもRAV4やCR‐Vなど日本製の小型SUVが販売上位に顔を出し始めてから久しい。

 注目すべきは、ここ数年、アメリカでの人気が急上昇している、1970年代~90年代半ばごろにかけて発売された古い日本車たちである。

 特に2014年ごろからは、1990年前後に発売された「ちょっと古い日本車」が人気である。その火付け役となったのは89年発売の「スカイラインGT‐R」(日産)だ。

 人気の要因の一つには、2001年に1作目が公開された、アメリカの国民的映画「The Fast and the Furious」(邦題/ワイルド・スピード)シリーズの影響もあるだろう。公道レースを中心としたカーアクション映画で、たくさんの日本車が登場した。

 さらには、日本の会社が販売した家庭用ゲーム「グランツーリスモ」(レースゲーム)の爆発的なヒットも、熱狂的な日本車ファンを急増させた一因だ。

 こうした日本車本体の人気とともに、外せないのは「JDM」。「JAPANESE DOMESTIC MARKET」の略で、自動車における「日本独自の仕様」という意味だ。

 具体的には、オレンジ色のウィンカー(アメリカでは赤)、水中花のシフトノブや小径ハンドルなど、アメリカには存在しない様々なアイテムのことだ。その中には、「右ハンドル車」というのも含まれている。

 アメリカは、排ガス規制に適合していないことなどを理由に、中古車の輸入を禁じている。ただ、「25年ルール」という特例措置があり、製造から25年を超えた車は、「クラシックカー」として規制から外れる。

 そのため、過去に日本で族車に改造された右ハンドルの車種も、アメリカに入ってくるようになったのだ。

 では、いったいどんな人たちが日本車に興味を持ち、族車を作っているのか?

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