東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
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選抜大会中止を発表した記者会見で話す日本高野連の八田英二会長(右)、中央は毎日新聞の丸山昌宏社長=3月11日 (c)朝日新聞社
選抜大会中止を発表した記者会見で話す日本高野連の八田英二会長(右)、中央は毎日新聞の丸山昌宏社長=3月11日 (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、中止の決定が下された高校野球や、延期になったプロ野球について言及する。

【写真】日本高野連の八田英二会長と毎日新聞の丸山昌宏社長

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 世界からスポーツだけでなく、イベントが続々と消えている。世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大して、世界保健機関(WHO)が「パンデミック(世界的大流行)」と表明。米国ではNBAで選手の感染が発覚し、全試合がしばらく中止となった。こうなると米国は速い。トランプ大統領の号令の下、ここから数日で一気にスポーツイベントは中止となるだろう。

 今は感染拡大を阻止するのに必死な時期だから致し方ないという思いがある。実態の見えないウイルス感染。不要不急の外出を控えるようにと言われれば、みんな家に閉じこもる。その閉塞(へいそく)感が世界中に広まっていると感じる。

 自国を守るということだけ考えれば、それでも構わない。ただ、五輪を開催する日本が、そして東京がギブアップする前に「東京五輪は1年間延期すべきかも」という言葉を、世界に影響力のある米国トップが言ったことには驚いた。どれだけ力があろうが、そんなことはメディアを通して言うべきではないと感じる。政治的な状況を含めて細かいことはわからないけどね。

 国内の野球界に目を転じると、ここ1、2週間は大きな決断を強いる期間だった。今月11日には日本高野連と毎日新聞社が春の選抜大会の中止を発表した。4日に無観客試合での開催へ尽力することを表明したが、1週間で方針転換した。それでも大会主催者側が開催へ尽力した姿勢だけは、周囲が否定すべきではない。甲子園球場のある兵庫にも感染者が増え、球児への感染のリスクが消せない限りは開催できないとの判断。ギリギリまで参加者のために努力する姿、そしてその上で決断するという作業は、簡単なことではない。

 最悪の可能性を想定してあきらめることは簡単であるが、あきらめない姿勢なり、一度は決めたことを覆すエネルギーは相当なものだ。そして、ここから我々が考えなきゃいけないのは「いつ、一歩を踏み出すか」だ。

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