広島・森下暢仁(左)と中日・郡司裕也(右) (c)朝日新聞社
広島・森下暢仁(左)と中日・郡司裕也(右) (c)朝日新聞社
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 新型コロナウイルスの影響でいまだに開幕時期が不透明な今年のプロ野球だが、各チームは既に最終の調整段階に入っている。そんな中でも注目されるのは各球団の新人選手達だ。

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 毎年のように即戦力の触れ込みで入団してくる選手は多いが、実際に一年目からチームの戦力となるケースは決して多くない。一方で、昨年の近本光司(阪神)のように一年目から主力として大活躍する例も確かに存在している。果たして今年、そのようなチームを救う即戦力は誰になるのか、ここまでのオープン戦、練習試合のプレーぶりから探ってみたいと思う。

 全てのルーキーの中で、最も戦力として期待できそうなのはやはり森下暢仁(広島)になるだろう。オープン戦では4試合に登板し、0勝1敗、防御率4.20という数字に終わったが、これは3月15日のソフトバンク戦での結果が響いており(4回5失点で負け投手)、それ以外の3試合は安定した内容だった。特に圧巻だったのが3月8日の西武戦だ。12球団でもトップクラスの強力打線を相手に5回を投げて被安打3、1四球、無失点、8奪三振とほぼ完璧なピッチングを見せたのだ。コンスタントに150キロ前後をマークするストレート、落差抜群の緩いカーブ、打者の手元で鋭く変化するカットボール、チェンジアップを高い精度で操り、先発投手として必要な要素を備えている。大学の先輩である野村祐輔が故障で出遅れているだけに、大瀬良大地、K・ジョンソンに次ぐ先発の三番手としてチームからの期待も大きい。もちろん新人王の最有力候補である。

 森下以外に先発候補として戦力となる可能性がありそうなのが浜屋将太(西武)、河野竜生(日本ハム)、岡野祐一郎(中日)、吉田大喜(ヤクルト)の4人だ。この中でオープン戦でのアピールに成功したのは浜屋と岡野になるだろう。浜屋は初登板となった3月1日のDeNA戦こそ2回で被安打5、1失点と打ち込まれたものの、続く2回の登板では安定したピッチングを披露。特に3月7日の広島戦では3回を投げて6奪三振と素晴らしい投球を見せている。体は決して大きくないものの、シャープな腕の振りで左打者の内角にも腕を振って速いボールを投げられるのが長所。ここまではリリーフで起用されているが、左の先発投手が手薄なチーム事情を考えると、ローテーションの一角に入ってきてもおかしくないだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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