今回のコラムでは故障と手術数の増加の理由には触れないが、若手投手たちが手術を選択しやすい理由の一つには、現在ではリハビリ技術の向上によってほぼ確実に実戦復帰は果たせることがあるだろう。

 2018年から2年連続でサイ・ヤング賞を獲得したジェイコブ・デグロム(メッツ)もトミー・ジョン手術の経験者。しかも2010年のドラフト9巡目(全体272位)で指名されたその年に、マイナーでわずか6試合を投げただけで右ひじのじん帯を部分断裂し、秋には手術を受ける羽目になっている。

 必然的に翌2011年は全休。だが2012年の復帰後は伸びのある速球とチェンジアップを交えた緩急でマイナーを駆け上がり、2014年にメジャーデビュー。以降の活躍は前述のとおりで、いまや現役屈指の投手として名をはせている。

 昨季にオールスター初選出を果たして14勝(4敗)を挙げたドジャースの若手右腕ウォーカー・ビューラーも、2015年のドラフト1巡目(全体24位)指名を受けてプロ入りした直後にトミー・ジョン手術を受けている。復帰は2016年のシーズン途中だが、翌2017年9月には早くもメジャーデビューを果たした。

 デグロムとビューラーの2人に共通しているのは、いずれもプロキャリアのスタート直後にトミー・ジョン手術を受けながら、復帰後はあっという間にメジャーでもトップレベルの投手になったこと。もちろん彼らの才能や努力があってのもので、手術をしたのが正解だったというのは結果論にしかならない。だがいったんは手術を回避してリハビリや再生療法を選択していたら、今日の彼らはなかったかもしれないのもまた事実だ。

 冒頭で触れた堀田も、プロになっていきなりの手術と長期離脱が逆風なのは確かだが、これでキャリアが終わってしまったわけではない。むしろ早期の手術に踏み切ったことで、今後の選手生命が伸びた可能性だってある。編成部門の失態として処分を下した巨人の姿勢の是非はともかく、新人投手のトミー・ジョン手術に踏み切ったことは、数年後には英断だったとされる可能性まである。今回の件の最終的な評価は堀田の復帰と将来を見てからということになるだろう。(文・杉山貴宏)

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