残り2カ月となった、ロンドン五輪の開幕。オリンピックおじさんこと山田直稔さんは今年も参加予定だ。山田氏は1964年の東京五輪以来、13大会すべての応援に駆けつけている。1980年のモスクワ五輪では、ソ連の駐日大使館へ計24回訪れ、大使のお墨付きをもらうも、直前に日本の不参加が決定。それでも山田氏は単身、ソ連に乗り込み、唯一の「日本代表」として会場中から注目を浴びたという。
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いざモスクワ。ソ連の人たちは私に心を開いてくれないのでは、と思っていたけど、杞憂だったな。最初はチラシや5円玉を配ろうとする私を警戒していたんだけど、まず警察官が受け取ると、我先にともらいにやってきた。20歳ぐらいの女性が白いブラウスの胸の部分に「サインして」と言ってきたのには驚いたね。
開会式にはソ連国旗と五輪旗を持って臨んだ。10万人の観衆が静まり返った瞬間を逃さず、「ピィーーッ」と笛を響かせた。そしてただ一つ覚えておいたロシア語で絶叫したんだ。
「ミール・イ・ドゥルージバーーーー(平和と友好)」
すると、会場は大喝采。ブレジネフ書記長夫妻が、こっちに手を振ってくれたのには驚いたね。
※週刊朝日 2012年6月8日号