そう話すのは、国際医療福祉大学成田病院リハビリテーション科部長の角田(かくだ)亘さん。同大学の三田病院では、食道や胃、腸などのがんで手術を受ける患者に対して実施している。角田さんはリハビリの専門医として、三田病院で2016年まで指導していた。
「がんや心臓病の手術など、あらかじめ日程が決まっている手術が対象になりますが、これをすると術前だけでなく、術後の体力が維持されます。これはハーバード大などの研究でわかっています」
始めるのは早いほうがいいが、1週間前からでも効果は表れるそうだ。角田さんが推奨するのはスクワットや深呼吸、ウォーキングなど。高齢者でも安全にできるものばかりだ。
【1】スクワット=足を腰幅より少し広く開いて立つ。息を吐きながらゆっくり膝(ひざ)を曲げて腰を落とす。このとき膝が足のつま先より出ないよう注意。息を吸いながらゆっくりと膝を伸ばす。
【2】深呼吸=仰向けになり膝を立て、両手を下腹部にあてる。ゆっくり息を吸っておなかを膨らませる。口をすぼめて「フー」と息を吐き、おなかをへこませる。
スクワットと深呼吸はそれぞれ10回1セットとして、1日に2、3セット行う。
ウォーキングは自分のペースで。まず20分ぐらい歩き、徐々に時間を延ばしていく。雨の日や体調が悪くて外に出られない日は、家の中で足踏みをしてもよいそうだ。
プレハビリテーションは体力の低下を防ぐだけでなく、入院期間の短縮や、合併症の減少によって医療費を抑えられるといったメリットもあるという。
「期間が短いので、運動が苦手な患者さんでも続けられます。うれしいことに、プレハビリテーションを機に運動に興味を持ち、『退院して家に帰ってからも続ける』と話してくれた患者さんもいます」(角田さん)
プレハビリテーションでは、体力アップに必要な栄養素を取ることも推奨している。具体的には、筋肉の材料となるたんぱく質(鶏肉、マグロ、牛乳、チーズ、豆腐、納豆など)と、筋肉を増す効果があるビタミンD(サケやサンマ、イワシ、マイタケ、干しシイタケなど)だ。(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2020年4月24日号