首都直下型地震による被害地域は、富士山爆発の降灰エリアとも重なる。南海トラフ地震では神奈川、名古屋、大阪、福岡など大都市では震度6弱以上の揺れが想定されている。

 最も懸念されるのが避難所だ。

「いま富士山の噴火や地震といった大災害が起きれば、多くの人が避難所に押し寄せるでしょう。しかし、濃厚接触を防ぐべき現在の状況で避難所に人が殺到したら、避難所は大混乱になり、感染症や持病で亡くなる方が多く出る危険性がある」

 こう警鐘を鳴らすのは、防災・危機管理アドバイザーで「防災システム研究所」(東京)の山村武彦所長だ。

 大地震や広域豪雨災害などが相次ぐ中、災害時は避難所に多くの人が身を寄せ、そこでの生活が長期化する傾向にある。

 9年前の東日本大震災では約47万人が避難所生活を強いられ、閉鎖まで9カ月を要した。4年前の本地震でも約18万人が避難し、閉鎖まで7カ月に及んだ。昨年10月の関東から東北の広範囲で大雨をもたらした台風19号では、約24万人が避難し、閉鎖までに約5カ月かかった。

 体育館のような一部屋に大勢が密集すると、感染リスクは高くなるとされる。

 1995年の阪神・淡路大震災では、避難所でインフルエンザが流行し肺炎による多くの災害関連死を招いた。東日本大震災でも、宮城県や岩手県内の避難所でインフルエンザ患者が出た。熊本地震では、熊本県南阿蘇村の避難所になった中学校でノロウイルスやインフルエンザ患者が相次いで確認された。ノロウイルスは死に至る病気ではないが、特に乳幼児や高齢者は下痢による脱水で症状が重くなることもある。

 避難所での感染症リスクについて、感染症に詳しい「インターパーク倉持呼吸器内科」(宇都宮市)院長の倉持仁医師は密閉、密集、密接の「3密」による危険性についてこう話す。

「避難所のように不特定多数が密集して暮らす場所では、心理的なストレスに疲労もたまりやすくなります。加えて、換気が悪く、衛生状態も決していいとは言えず、感染症が流行するための条件がそろっています」

 国も、避難所での感染爆発を懸念している。内閣府などは4月1日、災害時は可能な限り多くの避難所を開設して避難者のスペースを十分確保し、十分な換気や避難者の手洗い、咳エチケットを徹底するよう各自治体などに通知した。

 新型コロナウイルスは飛沫感染のため、咳やくしゃみなどに混じったウイルスを吸い込むことなどで感染する。先の倉持医師も、避難所での感染対策としては「換気が第一」としてこう話す。

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