緊急事態宣言が全国に拡大された。しかし、怖いのは新型コロナウイルスだけではない。もしいま、富士山の噴火や、地震に襲われたら──。備えなければ命を守れない。AERA2020年4月27日号から。
* * *
ただでさえ不安なのに──。
都内の会社員の女性(38)は胸が騒いだ。
12日午前0時44分頃、茨城県南部を震源とする地震が起きた。茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の各県で震度4を観測した。
「普段ならこれくらいの揺れだと『またか』と思うけど、避難しないといけないような大地震だったらどうしようと思って。避難所に行って新型コロナウイルスに感染するかもと考えると、怖くなります」(女性)
想像したくない。だが、新型コロナウイルスの感染が拡大する今、大規模災害が起きたらどうすればいいのか。忘れてはいけないのが日本は災害大国ということだ。いつ起きてもおかしくないと言われている「災害」は少なくない。
首都機能が麻痺するまで3時間──。3月31日、政府の中央防災会議作業部会が公表した「富士山噴火」の想定結果は、衝撃的な内容だった。
過去の富士山噴火のうち、宝永4(1707)年の「宝永噴火」をモデルに風向や風速、降雨などの条件を変え、大量の降灰が15日間続いたと想定し、影響を調べた。
火山灰が首都圏を直撃するのは西または西南西の風のとき。噴火から3時間で、首都圏の広範囲を火山灰が直撃。わずかな降灰でも地上の鉄道は止まり、東京と神奈川の大部分、静岡、山梨、埼玉、千葉、茨城の一部で鉄道の運行に支障が出る。雨が降れば電線がショートして広範囲で大規模停電が発生、断水や通信障害で、首都機能がマヒする。
降灰が約2週間続くと、新宿区など都心で灰が約10センチ積もる。鉄道は首都圏ほぼ全域で停止。物流は途絶え、日常生活の継続が困難になるという。
富士山爆発による降灰エリアは、最初に緊急事態宣言が出された東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県のうち、東京、神奈川、埼玉、千葉とぴったり重なる。
富士山の噴火以外にもまだある。近未来に日本を襲うとされる首都直下型地震と南海トラフ地震。この二つの大地震の発生も切迫している。首都直下型地震は、マグニチュード7クラスが30年以内に70%の確率で起きるとされる。南海トラフ地震はマグニチュード8~9クラスが30年以内に70~80%の確率で起きると予想される。その際、静岡から宮崎にかけて震度7の地震が襲い、関東から九州にかけての太平洋沿岸の広範囲に3メートルを超える大津波の襲来が、26%以上という非常に高い確率で想定されている。