「感染を広げないようマスクを着用し、せっけんによる手洗いやうがいを徹底する。プライバシーを確保する上でも、段ボールででもいいので、間仕切りをつくることも大切です」

 だが課題は多い。

「避難者が殺到したら、距離をとることはまず無理」

 台風19号で死者10人、行方不明者1人と市町村単独では最多の犠牲者が出た宮城県丸森町の担当者は頭を抱える。当時、最大約550人が避難所を利用、うち85人余が同じ小学校体育館で過ごした。感染症は起きなかったが、こう嘆く。

「避難所として使える施設はどこもそんなに広くなく、密集しないようにするにも限界があります」(同町総務課)

 地震の際にノロウイルスが発生した南阿蘇村では、国の通知を受け、災害時の避難の協議に入った。

 担当者によると、熊本地震の教訓もあり、大地震が起きた場合、一つの避難所に避難者を集めるとウイルスが蔓延するので、取り壊す予定の200棟近い災害仮設住宅を利用してはどうか、と検討しているという。

「最終的にどうするか、梅雨が始まる前までには確定したい」(同村防災係)

 一方、東京都は、歯切れが悪い。都の担当者は言う。

「今は新型コロナ対策の行動計画に基づいて対応しています。仮に、地震や富士山の噴火が起きた場合、地域防災計画に基づき対応する。避難所運営に関しては感染症防止という観点から、例えば消毒班をつくって消毒したり、定期的に健康管理をしたりする形で対応する計画です」(都総合防災部)

 大規模災害の度に、国の対応が問題になる。総合防災コンサルタント事業を行う「防災クリエイティブマネージメント」(大阪府大阪狭山市)の防災アドバイザー・岡本裕紀子さんは、避難所の収容人数はおのずと限界があり、国は感染症と地震や風水害が重なった複合災害に備え、(1)避難所受け入れ基準の事前検討(2)テント村のような避難生活を送ることができる場所の設置──この二つの対策や工夫が必要だという。

 例えば、基礎疾患があり、ウイルスに感染すると重症化しやすい人は優先して指定避難所に受け入れるなど、避難所への受け入れ基準を作成しておくこと。テント村のメリットは、家族単位で生活できてコロナ感染拡大予防対策が実現できることだ。感染者にはテントで過ごしてもらうことが可能で、プライバシーも確保できるという。

「国は感染症対策を打ち出すと同時に、国民には各家庭で今できる防災対策にしっかりと取り組むことの大切さを発信することが重要です」(岡本さん)

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年4月27日号より抜粋

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