投手とは思えぬ打撃を披露した阪神ムーア (c)朝日新聞社
投手とは思えぬ打撃を披露した阪神ムーア (c)朝日新聞社
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 日本で活躍する外国人投手は、打撃でもチームに貢献する例が多い。その代表格が、2002年に阪神入りしたトレイ・ムーアだ。

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 スキンヘッドと口髭がトレードマークの左腕は、大学まで投打二刀流。来日1年目に10勝、打撃も62打数17安打6打点の打率2割7分4厘と両方で結果を出した。

 6月13日の中日戦(ナゴヤドーム)で、0対0の7回1死、バンチの頭部付近をかすめる球に対し、怒りの表情でマウンドに詰め寄った直後、バットを折りながらも左前安打を放つ闘志満々のプレーを覚えているファンも多いはずだ。

 翌03年も2年連続二桁の10勝を挙げ、チームの18年ぶりVに貢献するとともに、3割2分6厘の高打率をマーク。5月17日の巨人戦(甲子園)では、4回1死一、二塁、木佐貫洋のフォークを逆らわず三塁方向に流し打つ決勝タイムリーを放ち、投打にわたる活躍で1対0の勝利の立役者に。お立ち台で「阪神ファンは一番や!」と叫んだ姿も懐かしく思い出される。

 そんな野手顔負けの打撃センスを買われ、同年のオールスターファン投票では、一塁手部門で3位に入り、1軍で1試合も登板していない川崎憲次郎が先発投手部門の1位になる“川崎祭り”とともに話題を呼んだ。

 翌04年はオリックスでプレーしたが、DH制のパ・リーグは勝手が違ったのか、6勝6敗、防御率6.24と精彩を欠き、同年限りで日本を去った。

 引退後は地元・テキサスで野球教室のコーチになり、コロナ禍が拡大する今年4月7日、JRFPA(日本プロ野球外国人OB選手会)のツイッターを通じ、「人との距離を保って、この大変な時を一緒に乗り越えましょう」と日本のファンにメッセージを送っている。

 巧打者タイプのムーアとは対照的に、ツボにはまれば、中軸打者も顔負けのパワーを見せつけたのが、96年に巨人に入団したバルビーノ・ガルベスだ。

 1年目は150キロ近い速球とチェンジアップを武器に6月までに7勝を挙げたが、打率は1割にも満たず、打つほうはさっぱりだった。

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まさかの“打撃開眼”