ところが、打者としてまったく期待されていなかった男が、7月4日のヤクルト戦(神宮)で突然打撃開眼する。2回1死、村田真一の一発で4対0とリードを広げた直後、打席に立ったガルベスは、田畑一也から試合を決める2者連続弾。「生まれて初めて」という本塁打に「鳥になった気分だぜ」と気分を良くし、3失点完投の8勝目。この時点で巨人は34勝35敗の借金1、首位・広島に10.5ゲーム差と、優勝の「ゆ」の字もなかったのだが、ガルベスの投打にわたる活躍が“メーク・ミラクル”の扉をこじ開けた。

 7月10日の広島戦(札幌円山)でも、2対0の5回、ガルベスは2試合連続となる中越え2号ソロを放ち、107キロの巨体を揺すってダイヤモンドを1周。投げても4安打1失点完投と乗りに乗った。結果的にこの1勝は、逆転Vへの大きな1歩となる。札幌シリーズで広島に連勝した巨人は、夏場以降、猛チャージをかけ、2年ぶりのリーグ優勝を実現。16勝を挙げたガルベスも最多勝に輝いた。

“鳥になった男”は、99年にもどえらいことをやってのける。5月21日の阪神戦(甲子園)と8月13日の横浜戦(横浜)でいずれも満塁本塁打を放ち、プロ野球史上初の投手でシーズン2本のグランドスラムを記録。横浜戦で放ったのは、推定飛距離140メートルの場外弾とあって、松井秀喜も「ガルベスの飛距離には敵わないよ」と脱帽するほどだった。

 その一方で、頭に血が上りやすい性格から、乱闘事件を起こしたり、球審にボールを投げつけて無期限出場停止処分を食うなど、トラブルメーカーとして悪名を残したが、打撃でも“暴れん坊”のイメージどおり、通算10本塁打を記録している。

 ガルベス同様、パワフルな打撃で名を売ったのが、広島在籍2年間で26勝を挙げたコルビー・ルイスだ。

 1年目の08年は、最速153キロの速球と安定した制球力で、チーム最多の15勝、リーグ2位の防御率2.68、リーグトップの183奪三振と活躍し、「神様、仏様、ルイス様」と呼ばれた。打つほうでも、打率は1割6厘ながら、5月18日の巨人戦(東京ドーム)、9月9日の横浜戦(広島)で本塁打を記録している。

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広島の助っ人は投打ともに一級品