そのことを裏付けるように、巡航ミサイル発射前日の13日には、米空軍の偵察機E-8ジョイントスターズと、米海軍の偵察機EP-3Eが朝鮮半島上空を飛行。ミサイル基地の動きなどを分析したという。
裵氏が続ける。
「これは正恩氏の居所や健康状態の調査を念頭にしたものではなく、純粋に軍事諜報(ちょうほう)活動として行われています。14日当日には、中国軍の偵察機も飛来しています。米国も中国もミサイル発射の動きを事前に察知しているわけです。ということは、正恩氏の司令の下にミサイル発射が行われたと考えるべきですから、様態が急に悪化したとは思えないのです」
ミサイル発射時点では正恩氏が健在だったとして、重要行事である翌15日の太陽節にも現れずじまいで姿をくらましているのは、なぜか。
「どうやら側近や警護要員らが新型コロナウイルスに感染し、別荘や特別施設のある元山に避難しているようです。仕方なく、そこでテレワークしているという話です。本来なら、巡航ミサイル発射を国営メディアに大々的に宣伝させ、そのうえで太陽節に臨んで存在感を示すつもりが、すっかりアテが外れてしまったことでしょう」(裵氏)
“独裁者”もコロナが怖いということか。
4月27日には、軍事境界線(DMZ)上にある板門店で開催された南北首脳会談から2周年を迎えた。正恩氏としては、何らかの政治的なアプローチを発しておきたかったというのが本音だろう。
「コリア・レポート」編集長の辺真一(ピョン・ジンイル)氏も、重病報道に懐疑的な見方をする。
「CNNは、北朝鮮問題の報道については“前科”がありますからね。正恩氏の叔母で、12年に処刑された張成沢元国防副委員長の妻でもある金慶喜(キム・ギョンヒ)氏の毒殺説を報じたことがありましたが、今年になって生存が確認されています。ほかにも具体的な病院名を出して、そこで治療を行い、元山で静養中などといった報道もありますが、最高尊厳といわれる正恩氏に関する情報が逐一入ってくることなどあり得ません」