【Shell(2016)】片山真理(かたやま・まり)/1987年生まれ。2012年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。自身で装飾を施した義足を用いたセルフポートレートなどを制作(撮影/片山真理)
【Shell(2016)】片山真理(かたやま・まり)/1987年生まれ。2012年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。自身で装飾を施した義足を用いたセルフポートレートなどを制作(撮影/片山真理)
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 今年の木村伊兵衛写真賞を受賞した片山真理。その唯一無二である作品の美しさ、存在感に圧倒される。彼女の創作の根底にあるものは何か。AERA 2020年5月4日-11日号掲載の記事を紹介する。

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 まっすぐにこちらを見据える強い眼差し。視線をそらしてもなお消し去ることはできない圧倒的な存在感。美しい人だ、そう思わずにいられなかったのは、決して自由ではない身体さえも味方にしたかのような、伸びやかで気高い精神性を感じさせるからだろうか。
 
 群馬県に住む片山真理さん(32)は、先天性の四肢疾患のため9歳の時に両足を切断した。16歳のとき、絵を施した義足でファッションショーに出演。モデルなどの活動の傍ら、10代の頃から作り続けてきたオブジェとともにセルフポートレートを撮り始める。片山さんは2005年からスタートしたアーティスト活動の集大成として初の写真集『GIFT』を昨年上梓。この写真集などで、第45回木村伊兵衛写真賞を受賞した。

「オブジェや立体作品などのアーティスト活動の時は、自分のバックグラウンドや身体性のことを伝えざるを得ませんでした。作品を発表するときに、かならずそこが引っかかっていたのですが、写真には平等性を感じたのです。写真集の制作当初はセルフポートレート以外の物撮りはプロのカメラマンに撮ってもらうという案もありましたが、それでは本当に自分の作品にならない。そこで、オブジェもすべて自分で撮影しました。こうして作ってきたものが評価されたのは自信になりました」

 今回の木村伊兵衛写真賞の選考委員でもある写真家の石内都さんから言われたという「あなたは写真家じゃないから」という言葉。その一言で、歴史ある賞の受賞でプレッシャーを感じていた片山さんは、肩の力をすっと抜くことができた。

 写真家じゃない──。一見厳しく思えるこの一言だが、これまでの片山さんの写真との関係を振り返れば、誰もが納得するだろう。その活動は「写真家」という枠だけには到底とどまらない。片山さんにとって写真は「すごく相性がいい」表現方法のひとつなのだから。

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