「10代の頃から、裁縫でオブジェを作ってインターネットにアップして見てもらっていました。そのための説明的な写真としてセルフポートレートを撮り始めたんです。いつしか、そのセルフポートレートが作品になり、空間ごと見せるインスタレーション展示となりました。最近はそのインスタレーションの展示風景を自分で撮っています。通常、インスタレーションの写真って建築写真のようにわかりやすく撮るんです。でも私が撮るともう少しオブジェとか、作品を意識してしまって、それでまた写真作品ができあがっちゃう。永遠に終わらないんじゃないかと思っています(笑)」

 これまでずっとアートがよくわからないと話してきた片山さん。だが最近、自分の中のアートが少しわかってきたという。

「自分の中のアートは絶対に美しいだけのものでも、優しいだけのものでもない。だけど自分がアートをするならば、過激で痛々しかったり、人を傷つけるようなものにはしたくない。自分が美しいというものを作ることが、私にとってのアートだなって思うようになりました」

 片山さんの作品にたびたび登場する貝殻やパールといった「美しい」小物たち。そこにはこんな思いも秘められていた。

「数年前、東京から帰る電車が群馬に入ったとたん、車窓から見える景色が自分の作品と同じ色合いだったんです。最初に気づいたときは、すごいショックでした。群馬には海はないのに貝殻の色もその景色に似ている。ショックだったけど、最近大人になったからか、きれいだなと素直に言えるようになりました。それは私の原風景だから」

 美しき故郷の原風景をオブジェ作品に落とし込む。そんな創作活動をしていた片山さんに大きな変化が訪れる。17年7月、女の子の母になったのだ。

「妊娠がわかったときは、めちゃくちゃ忙しくてけっこうギリギリまで仕事をしていました。だけど子どもが生まれたらこれまで通りに仕事はできないだろうし、一人で作っていくことの限界というのを感じていて。いままでの作品は部屋などを作り込んで、シャッターを押す。一人だからできていたことです。撮影以外にも問題はあって、糸と針といった制作道具が常にある環境だったので、赤ちゃんはそこでは育てられないよねって思って全部片づけました。環境の問題と心構えの問題で、ガラッと作風が変わったんです。そもそも写真集を作ったのは、『今まで通りにいかないから、写真集が私のかわりに作品を世界中に連れていってくれるだろう』という気持ちもあったんです」

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