これまで室内が中心だった撮影は屋外へ。作風も変わっていった。現在、片山さんが撮り続けているのは、足尾銅山の写真だ。自らは登場せず、山だけ、川だけ、といったシンプルでストレートな写真だと言う。
「娘が生まれたことによって、自分の人生の単位でしか時間感覚がなかったものが、100年、200年、300年といった長さで得られるようになりました。すると、自分って何なんだろうというところに立ち戻りました。普段私たちが自然だと思って接しているものも周りを見渡すと全部人間が手をかけたもの。たとえば山ならば植林されています。『じゃあ本当の自然ってなに? 人工ってなに?』。そこに自分の身体性というのが重なっています。今、負の遺産とか都合のいい言葉があるけど、ネガティブな感情で歴史に刻むのではなく、それを含めて今を肯定できるようにしていかないと、私自身が生きている理由に納得がいかない。肯定したいという思いがあるんです」
高校3年の春。片山さんは「群馬青年ビエンナーレ」で奨励賞を受賞した。審査員だった東谷隆司さんに「君は今日からアーティストだよ」と背中を押され作品を作り続けた。私が美しいと思うものを作るのがアート──。その答えが、この『GIFT』の中にある。
(編集部・三島恵美子)
※AERA 2020年5月4日-11日号