まだまだ安心はできないが、それでも日本のコロナ禍はコントロールできるのではないかという感触が得られるところまできたのではないだろうか。それにしても、災害時における日本人の我慢強さには毎回驚かされる。幾度かの大地震や大水害、台風被害などの際にみせた気質は、日本の誇れる財産であろう。
●現世利益からあの世の処遇へと
このことに限らず日本には、いくつもの独特な風習などが残っている。海外から伝搬したものも独自に進化や変化をして定着していった。
古来、日本には死後の世界としてよみの国という概念があった。仏教の伝来とともにあの世は具体的になっていき、地獄という世界観が描かれていく。具体的に表現され始めたのは鎌倉時代以降で、その世界観は平安時代の高僧・源信が記した書物によるところが大きい。当時流行していた末法思想が、それまで人々が求めていた現世利益から死後の処遇に対する興味へと移行させたと言えるかもしれない。
●十王と閻魔大王
この死後の行き先を決めるのが十王たちで、その中の一人が閻魔大王である。閻魔の根源はもちろん仏教が起こったインドにあるが、中国で道教と習合し、日本で独特の深化をしている。インドでの原型である、人間としての最初の死者であること、生前の罪を裁く神であること、といった点は継承されつつ、閻魔大王は日本へ到着し今でも各所に鎮座する人気の仏となっていく。
●閻魔大王の道具・浄玻璃鏡
日本で多く祭られるようになった原因は、因果応報という概念の強さにあろう。生前の行いが死後に住む世界を変えるという考え方は、日頃の些細な行動さえも整えるようになり、間違いを犯したと感じた時は閻魔大王へ供物を届け反省を告げるのである。閻魔大王が冥界で亡者の生前の行いを確認するために使う道具は「浄玻璃鏡(じょうはりきょう)」という鏡で、祭られている閻魔大王の前には必ずこの鏡が一緒に置かれている。この鏡の前で嘘をついてもすぐにバレてしまうわけで、閻魔に舌を抜かれるのはこの時である。閻魔のご利益として子供のしつけ祈願や子授けがあるのは、仕置と転生を司る仕事のためと思われる。