「麒麟がくる」主演の長谷川博己も信頼する池端俊策氏は「太平記」の脚本も書いている(C)朝日新聞社
「麒麟がくる」主演の長谷川博己も信頼する池端俊策氏は「太平記」の脚本も書いている(C)朝日新聞社
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 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」が6月7日の放送を最後に、いったん休止される。コロナ禍による収録のストック切れが原因だから、やむをえないとはいえ残念だ。

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 ただ、不幸中の幸いはテイストの似た旧作が日曜朝のアーカイブ枠(NHKBSプレミアム)で再放送中であること。1991年に同じ池端俊策の脚本で制作された「太平記」だ。

「麒麟」の舞台が室町時代の末期なのに対し「太平記」はその始まりを描く。今回、29年ぶりに大河を手がけるにあたり、池端はこう語っていた。

「以前に(室町幕府初代将軍の)足利尊氏を主人公にした『太平記』を書いたので、室町幕府の終わりを描いてみたいとかねがね思っていました。室町幕府最後の将軍、足利義昭と関係性が深いのが織田信長で、そこから明智光秀へといきました。信長と義昭をつなげたのが光秀だという説もあります」(マイナビニュース)

 しかも「太平記」は大河史上有数の傑作とも呼ばれる作品だ。その深い理由については後述するとして、まずは俗っぽい見どころから紹介するとしよう。

 それはズバリ、キャストの豪華さだ。再放送中といえば、朝ドラのBSプレミアムアーカイブ枠「はね駒」における、斉藤由貴、渡辺謙、樹木希林、沢田研二というのもなかなかのものだが、こちらもひけをとらない。

 真田広之、緒形拳、片岡孝夫(仁左衛門)、沢口靖子、武田鉄矢、柄本明、近藤正臣、児玉清……。「麒麟」同様、代役騒動も起きたが、病気で降板した萩原健一の穴は根津甚八が埋めた。

 また、鎌倉幕府最後の執権・北条高時役の片岡鶴太郎の不気味な怪演も話題になったし、バサラ大名・佐々木道誉役の陣内孝則のユニークな個性も注目された。バサラというのは、派手で豪快で実力主義的なあり方を指し、戦国から江戸初期にかけてのカブキ者の源流でもある。これは90年代初期に隆慶一郎の時代小説から始まった前田慶次のブームともシンクロしており、現在大人気のアニメ「鬼滅の刃」などの世界観を先取りしていたともいえる。

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