上さんはこう切り捨てる。

「率直に言って、大阪モデルは『世界では今、この議論はされていないんだけど……』みたいな内容なんですよ。京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長や大阪大学医学部など世界最高水準の人材や研究機関が集まる関西の知見が十分生かされたとは思えません」

 そのうえで、判断基準に盛り込むべき指標は「超過死亡率」と「抗体保有率」だと提言する。超過死亡率とは、新型コロナ感染による死亡者がどの程度増加したかを示す推定値で「これがグローバルなコンセンサスです」という。

 ではなぜ、大阪モデルは支持されるのか。上さんは言う。

「政府の対応があまりにお粗末だからでは。官邸の指導力のなさの裏返しとして、吉村知事や小池百合子都知事の評価が高まっているように感じます」

 政府は14日、直近1週間の新規感染者が10万人当たり0.5人未満などの「解除基準」を打ち出した。吉村知事を評価する世論の高まりを受け、基準を示さざるを得なくなったのだ。

 吉村知事は大阪維新の会の代表代行で、党の創設者である橋下徹・元大阪市長とも連絡を取り合う。特別措置法を「ポンコツ」とこき下ろすなど国を批判しながら世論を味方につけ、独自の施策を推し進める手法はかつての橋下氏を連想させる。

 在阪のジャーナリスト、立岩陽一郎氏(52)はこう話す。

「特別措置法に基づく緊急事態宣言では、私権を制限する主体は政府ではなく自治体の長。そもそも維新の会が持つトップダウンの姿勢が吉村知事のリーダーシップと重なり、この事態にマッチしたと思います」

 肯定的に受け止められている大阪モデルだが、落とし穴もある、と立岩さんは言う。

「少なくとも京阪神の連携がなければ機能しません。兵庫県、京都府のトップとの連携がどうなのかは疑問です」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年5月25日号