政府が39県の緊急事態宣言を解除する一方、「おあずけ」となった東京や大阪。独自路線で突き進む大阪府の吉村洋文知事が支持されるのはなぜなのか。AERA 2020年5月25日号では「大阪モデル」の妥当性について、専門家や関係者の見解を聞いた。
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39県の緊急事態宣言を解除する──。14日に安倍晋三首相がそう宣言した約2時間後、大阪府の吉村洋文知事は首相に劣らぬ注目を浴びて会議に臨んだ。
「感染拡大を抑えながら、社会活動も戻していく」
独自に休業要請などを解除する根拠となったのが、5日に打ち出していた「大阪モデル」だ。
(1)感染経路が不明な新規感染者が10人未満(2)検査を受けた人に占める陽性者の割合(陽性率)が7%未満(3)重症病床の使用率6割未満──の3点(1と2は7日平均)を、1週間連続で達成した。「なんぼやねん」と数字にこだわる大阪人気質に合う分かりやすさに加え、指標の達成度に合わせて通天閣や太陽の塔を信号機のようにライトアップして大阪人のハートをつかんだ。
だがこれに医学的見地から疑問を呈するのは医療ガバナンス研究所の上昌広理事長(51)だ。
「感染経路が不明な新規感染者の増加は蔓延(まんえん)を示す判断材料になるが、減ったことを収束の有効なサインと判断する例は世界的に聞いたことがありません」
というのも、極論すれば感染経路が不明なケースが1例でもあれば、その背後に未知の市中感染がどれぐらいの規模で広がっているのかを判断するのは困難だからだ。どこまで追跡調査し、「経路不明」と判断したのかによっても数字は変わる。
「検査の陽性率」についても、そもそもPCR検査が一部の対象者にしか実施されていない日本の実情では収束の判断材料に使えない、と上さんは言う。
政府の専門家会議の尾身茂副座長も11日の参院予算委員会で、確認された感染者数に比べ、「(実際の感染者数が)実は10倍か、15倍か、20倍かというのは、今の段階では誰も分からない」と語っている。