社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第2回。前回に引き続き、いま不安に思っている人が非常に多い、新型コロナウイルスでの生活不安に役立つ保障など国や自治体から受け取れるお金の話です。
* * *
新型コロナウイルスの感染者数がこの先、減少の傾向を見せたとしても、残念ながらまだ経済的な影響は拡大する可能性が高いと考えておいたほうがいいでしょう。直接的な影響を受けた業界の低迷が他の業種にも連鎖し、それが長期間続くことが予想されるからです。これに伴い、社会に大きな影響を与える休業者の増加について、政府は前回説明した休業手当について早期の見直しを検討し始めました。
■大転換させると政府が発表した、休業者への給付
勤めている会社やお店が休業した、または働き手が休業を命じられた場合、本来ならその休業中は、事業主による休業手当の支給が基本となります。
これは、労働基準法に定められていることによるものです。これまで国は、会社が滞りなく従業員に休業手当を支払えるよう雇用調整助成金を拡充してきました。しかし、会社が従業員に休業手当を支払ってから企業に助成金が支払われると後払いになって時間がかかる、また支給の申請手続きが煩雑といった理由から、企業によっては申請そのものを見送るケースも出ているのが実情です。
すでに、休業手当の不払いについて問題になっている例が報道されているので、ご存じの人も多いはずです。
企業が助成金を申請しなかった場合、個人ではどうすることもできません。このような休業手当が支払われず困窮する労働者に対して、5月14日に安倍首相は労働者個人が直接申請して受け取れる支給金の設立について発表しました。
今までの報道を見る限りでは、これは会社から十分な手当を受け取れない休業者に対して国が直接支援する、いままでの仕組みを大きく転換した新しい施策になるようです。