米国にはかなり古い球場もある。ボストン・フェンウェイパーク(1912年開場)やシカゴ・リグレーフィールド(1914年開場)は戦前に建設された。スタンド内通路や座席は狭いままである。しかし魅力的な新席や大型ビジョンを設置するなど、可能な限りファンに応え、伝統と革新を融合させて今でも愛され続ける。
「東京ドームではネット裏にあった記者席を3塁側へ移動、同場所へ新設した高価席は不人気。今年も升席シートという不思議な席を作った。ここ数年でも目立った改修は球場内スピーカーや座席改修といったものだけ。エンタメに欠かせない大型ビジョンも開場初期と変わらず、センター後方とネット裏の2カ所のみ。スタンドから試合を見る客の気持ちがわかっていないのではないか。全個室トイレにウォシュレットをつけたのは喜ばしいですが……」(前出の巨人担当記者)
野球のライバルはスポーツのみではない。映画やコンサート、ディズニーランドなどすべてのエンタメだ。他球場は早々と危機感を抱き、改修に本腰を入れた。福岡や名古屋は外野後方の壁面すべてが連結された超大型ビジョンとなった。大阪、千葉、仙台などは球場内に複数のビジョンが設置されている。甲子園にも従来の雰囲気を壊さないよう配慮しながら『甲子園ライナービジョン』が付けられた。各球場ともそれらを最大限に活用、球場内エンタメ充実を図っている。東京ドームが出遅れた感はいなめない。
近年は苦戦続きの阪神が、昨年はCSファイナルに進出、大一番で『伝統の一戦』が実現した。惜しくも巨人の4勝1敗(アドバンテージ1つを含めて)に終わったが、名門復活の大きな期待を持たせた。
しかし、今シーズンは新型コロナウイルスの影響もあり、すべてのエンタメの今後が心配されている。
その中で『伝統の一戦』は、何があっても不変のキラーコンテンツと言える。「東京ドームは巨人に魅力がなければ行きたい場所ではない。近年、巨人はファンを重視すようになりサービスも充実してきた。しかし以前のような全試合超満員にはならない。これは球団や選手ではなく、東京ドームにも大きな問題がある」(前出のMLB事情に詳しいスポーツライター)
『球場=箱』は熱狂を生み出すための重要な要因。だからこそ東京ドームはもう少しなんとかならないものだろうか。巨人、阪神、両球団のファンがお互い胸を張って自慢できる本拠地での『伝統の一戦』が行われて欲しい。