山手線沿線は都市化し尽くされ、新たな駅を設置できるような広い空地は存在しない。近年ではわずかに田端付近と、田町~品川間に車両基地が広がっているだけだった。
田町~品川間には、かつて寝台特急「ブルートレイン」などの運行にあたり、“名門”と称された東京機関区、品川客車区、田町電車区などの施設が設けられていた。国鉄分割民営化以降、JR東日本の東京総合車両センター田町センターに再編されたものの、広大な敷地はほぼそのまま引き継がれていた。
JR東日本は車両基地機能を東側(海側)に集約することで、都心部の一等地に計13ヘクタールもの再開発用地「グローバルゲートウェイ品川」を生み出した。2018(平成30)年9月、JR東日本は“山手線30番目の新駅”を含む一帯の再開発計画を「品川開発プロジェクト(第1期)」と名づけ、その概要を発表した。
それによると、新駅の本開業を含む全体の完成は2024年度を見込み、東京都港区港南・芝浦・高輪・三田地区にわたる計9.5ヘクタールに、4つの街区が設けられる。最も北側(田町寄り)の1街区には地上45階(高さ約173メートル)の住宅(806戸)・教育施設、2街区には地上6階(45メートル)の文化創造施設、3街区には地上31階(167メートル)の業務・商業・生活支援施設、南端部の4街区には地上30階(164メートル)のホテル・コンベンション施設などが建ち並ぶ。
まさに「新しいまち」が、山手線沿線に誕生することになる。その経済効果は約1兆4000億円にも及ぶと見込まれている。
車両基地があった関係で田町~品川間の駅間距離は2.2キロと、それまでの山手線29駅の平均駅間距離である約1.2キロを大きく上回っていた。高輪ゲートウェイと田町の間は1.3キロ、品川との間は0.8キロと、いずれも西日暮里~日暮里間を上回り、山手線の平均駅間距離に近い。
高輪ゲートウェイは、駅がほぼ1キロ前後の間隔でバランスよく並ぶ山手線に欠けていた、“最後の駅ピース”を埋める存在ともなった。もともとJR東日本の所有地に設置されたため、駅新設のための用地買収費用もかからず、新たな利用客の純増も見込める。地形や周辺の状況も含め、沿線にはここ以外にすべての条件を満たせる新駅候補地は、もはや見当たらない。
高輪ゲートウェイは、まさに“山手線最後の新駅”となるべき存在だった。