緊急事態宣言が解除された。長い外出自粛生活で、家族の親密性を高めた家庭もあれば、ストレスを上げた家庭もあったことだろう。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載。今回は妻に「強制」された状況に適応した夫の心理について解説する。
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首都圏も緊急事態宣言が解除されました。コロナ後は世界が変わるという論調はよく聞かれますし、事実、50日の間に世の中の一部は新しい秩序に変わり始めたようにも見えます。
出社するのがあたりまえだった日本のそうそうたる会社が、テレワークを導入するようになり、あれほどもめたコンビニの時短営業もいとも簡単に実現し、私たちの業界でも、かつてはZoomでカウンセリングなんてとんでもないと言っていたのに今や推進派のような人すらいます。
以前も書いたとおり、人は違う環境におとなしく我慢できるのは1週間で、逆に3カ月もやっていれば新しい環境に適応してしまいます。1カ月半というのはちょうどその分水嶺のようなところかもしれません。
今年、入学した学生さんたちは、入学式すらできなかったり、入学式しかできなかったりで、気の毒なことこの上ないですが、上級生ともなればリモート代返の技を編み出すなど、高い適応能力を発揮している「輩」もいるようです。
また、テレワークではろくに成果を出せていないように見えながらも、テレワークしている部下に「テレハラ」するおじさんは、ある意味この環境にさっさと適応した人とも言えます。こうした動きは大半の人が予想だにしなかった適応の仕方だと思います。
何かの制度変更や環境の変化があったとき、必ずしも、社会的に見て「正し」かったり、組織や家族が望む方向に適応したりするわけではないというのは、人間の多様性やクリエイティビティを垣間見る感じがします。もちろん「テレハラ」を擁護する趣旨ではありません。
家族に目を向けると、大なり小なり家族が一緒に過ごす時間が増えた家庭がほとんどだと思います。そのことが、家族の親密性を高めた家庭もあれば、ストレスを上げた家庭もあったと思います。
私の耳に入るのはどうしてもうまくいっていないケースが多いのですが、浮気症の夫が外出しないので、安心だという声を聞いた一方、ずっと家にいないといけないので、一挙手一投足まで監視されていてトイレしか気が休まる場所がないのに、長居するとそれも責められ、こんな生活は耐えられないという類の話は夫婦どちらからも聞きました。