東電は3月27日、福島第一原発(フクイチ)2号機の格納容器内で毎時72.9シーベルトの放射線を観測したと発表した。人は7シーベルトを浴びると100%死亡するとされている。72.9シーベルトは5分46秒でそれに至る数値だ。

 この数値、問題になるのは人間だけではない。フクイチの現場では現在も千葉工業大や東北大などの合同チームが開発した災害対応ロボット「Quince(クインス)」などが活動している。だが放射線は、機械からさえも瞬時にその機能を奪う。

 クインスの開発段階で、放射線に耐える能力を検証した東北大大学院の水谷圭司准教授が言う。

「放射線でいちばん厄介なのは、ロボットを制御する半導体への影響です。半導体は放射線に圧倒的に弱い。放射線が強い宇宙空間で使われる半導体と同様、ガンマ線を通さない厚い鉛で遮蔽しないと、半導体がすぐ壊れてしまう。しかし鉛で遮蔽すると機動性が落ちるので、高い放射線量の下で使うことを想定していない『クインス』は鉛で遮蔽していません」

 そこで気になった点がある。格納容器内の調査や補修に求められる「技術仕様」のうち、放射線に耐える能力は「毎時3シーベルト以上、累計で100シーベルト(100グレイ)以上」となっていることだ。

 この程度の技術仕様で毎時73シーベルトの放射線を浴びたら、2時間も持たないではないか。

 所轄する資源エネルギー庁の担当部署は、

「技術仕様は最低限、これだけのものが求められるということですので、実際には時間管理をしたり、遮蔽物をつけて耐放射線性能を高めたり、得られた技術をうまく改良しながら使っていくことになります」

 と言うが、果たして大丈夫なのだろうか。

※週刊朝日 2012年4月13日号