新型コロナの感染拡大により、多くの国が外出の制限や自粛を行う中、任天堂のゲームソフト「あつまれ どうぶつの森(通称:あつ森)」が世界的なブームとなっている。家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」向けのソフトで、発売はことし3月20日。発売からわずか2週間弱で、全世界で1177万本を売り上げ、スイッチ用ソフトの中でも過去最高ペースの売れ行きだという。なぜ「あつ森」はここまでブームになったのか。社会学者であり同ゲームの熱心なプレーヤーでもある、永田夏来さんに聞いてみました。
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■リーダー不在のコミュニティー
「あつ森」は、任天堂が2001年に発売したコミュニケーションゲーム「どうぶつの森」シリーズの最新作。舞台は無人島で、主人公はいろんな個性をもつ動物キャラクターと共に生活をスタートさせ、皆で居心地のいいコミュニティーをつくるというストーリーだ。新型コロナウイルスの影響で「集まれない」人たちが、「あつ森」上で卒業式を行ったり、デモを行ったりしたこともニュースになった。このブームは、単純にコロナ禍によるものなのだろうか?
私は社会学者として、子どもや若者向けのカルチャーに興味をもっています。その先に、社会のトレンドや未来が見えるからです。「あつ森」もその一つで、いつしか自分でもプレイするようになりました。
「居心地のよさ」を追求するというコンセプトが、今の若者たちが過ごす社会や人間関係の在り方を表していると思います。これまでのゲームや漫画ではチームの中にリーダーが1人いて、皆がその人を支えながら勝ち上がっていくストーリーが多かったのですが、若い人たちにとっては、理想とするチーム像が違うのでしょうね。
■「あつ森」は究極の「インスタ映え」
「あつ森」の世界的ヒットにおいては、例えば海外の有名美術館が所蔵品をゲーム上で展示できるようにデータを提供したり、高級ファッションブランドが登場キャラクターの洋服のためのデザインデータを公開したりしたほどです。ただし、若者に受けるだけでは、ここまでのブームにはつながらなかったでしょう。オンラインコミュニケーションのプラットフォームはほかにもいろいろあるのですが、「あつ森」はその世界観に普遍的なテーマが組み込まれていることがポイントだと思います。だからゲームに興味がない人、デジタルネーティブでない人も惹きつけられるのでしょう。